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コロナの時代の愛 その五 ~ 国家非常事態下のニューヨーク その徒然なる断面

Posted by 高見鈴虫 on 16.2020 コロナの時代の愛   0 comments

という訳で、コロナの春、そのアメリカ版である。

つい一月ほど前までは、中日韓における上や下への大騒ぎを尻目に、
コロナだ?んなものは、HOAX!:でっちあげだ!
とぶち撒いていては対岸の火事と決め込んでいた筈の我らが寅吉御大が、
その後の事態のあまりの急展開を前に気押しされては押しつぶされて、
そしてついについに発令された国家非常事態宣言。

世界を巻き込むこのコロナの渦が、
ついにここアメリカはニューヨークにも、
いまやしっかりと根付いては、
その目に見えぬ魔の手を着々と広げつつある。

なんだけどさ、
そう、なんかそうやって騒がれれば騒がれるほどに、
白々と興醒めこいては苦笑いばかり。

だってさ、見よろ、これ、この目の前の風景。
冬枯れのセントラルパーク、
その東の丘のど真中に、
いきなり突然、目の醒めるような染井吉野のその鮮やかなことよ。

例年になく暖かかったこの冬の煽りか、
普段よりも半月も一月も早くに狂い咲いたこの染井吉野。

そのあまりにもあっけらかんとした、
この長閑を絵に描いたような春の風景の中で、
いったいどこのだれが、非常事態宣言の戒厳令、
そんな現実を信じることができるものか。

ただ、こうしているいまも、
あの枯れた木立の向こう、
摩天楼の渓谷の狭間から、
絶えることなく遠く近く響き続ける、
救急車のサイレンのその輪唱。

いったいこの街で、この瞬間に、なにが起こっているのか・・

そのあまりのギャップの中で、
ますますと現実感が失せていく、
そのあまりの離人感、隔絶感。

コロナなんてみんな嘘なのよ。
だって見なさいよ、この風景、
この平和を絵に描いたような新春の風景・・

そうそうなんだよ、その筈なんだけど、
でありながら、
この耳鳴りのようにいつまでもいつまでも響き続ける、
この救急車のサイレン、その輪唱・・

あの木立の向こうでいったいなにが起こっているのか。

それはまさに、あの元旦の朝に迷い込んだ異次元世界、
チェルノブイリの悪夢の中に迷い込んだかのような、
あの不吉な幻影が、いまやまさに紛れもない現実のものとして、
この街そのものをすっぽりと覆い尽くしていくようで・・







という訳でこの世界規模の大災禍であるところのコロナ祭り。
日本を発祥とした爆買いラッシュの波が、
ついにここニューヨークにも押し寄せて、
普段から日参する近所の安売り自慢の巨大スーパーマーケットの前には、
朝8時の開店を前にして地平線にも届くかのような長蛇の列である。

朝の犬の散歩の途中に垣間見ては、
その行列の伸びた先の銀行の前。
なんか、銀行の前にこの人だかりってさ、
ここだけの風景を切り取っちゃうと、
まるで、取り付け騒ぎが起こったような、
そんな悪夢の光景と取れないこともなく。

なんか、不吉だよな、あの行列。
まるでスープキッチン、或いは・・
フーヴァーテラスで配給を待つ疲れ切った失業者の群れ、
あの大恐慌時代の風景、そのものじゃねえか。
確かに陰鬱な眺めよね。
笑ってるひとがひとりもいないしさ。

朝の犬の散歩を終えてダークスーツに変装こいて、
さあてそろそろでかけてくるかのその出勤の途中、
ふとみれば、あれ?さっきまでの行列が、
いまはまるで潮が引くようにかき消えている。

おっ、いまになって空いてきたのかな、と妻。
だったら、今のうちに買っておこうかな、
トイレットペーパーとかテイッシュとか。

いや、そんなもの必要ないだろ、と俺。
もしもの時には、ほら、インドでネパールでやっていたあの方法、
つまりは水と左手の人力ウォシュレットってな方法だってある訳でさ。
いやよそんなの、と妻。
貧乏旅行の毬花バックパッカーならいざ知らず、そんなことやっていて、
今度はまた肝炎だ赤痢だコレラだなんていうのが大流行したらどうなるのよ。

という訳で、だったら私、ちょっと寄っていく、と別れた駅の前。

あいつ、まったくチャチなペテンにひっかかりやがって。
コロナだ?トイレットペーパーだ?
知ったことかよ、と、舌打ちまじりに妻の後ろ姿を見送っては、
そして見渡す西72丁目の大通り。

そのあまりにものほほんとした朝の風景、ではあるものの、
そう言えば確かに、人影が減った、あまりにも減った。
普段からその混雑に苛立ちばかりを募らせながら、
いざその人影がすっかりと失せてしまった時、
そのあまりにものほほんと何気ない空虚な風景に、
得も言えぬ不吉な影が広がりはじめ・・

なあ、と呟く。
なあ、俺、なにか忘れていないか?
忘れ物?いや、違う、もっともっと、致命的なまでに決定的な欠落。
ああそうか、マスクか、と気づく。
そう言えば、マスクをし忘れていた。

最近、習慣となってしまったこのマスク。
ねえそんなおもちゃみたいな安物のマスクなんてしていたって、
気休めどころか逆に逆効果、といつも妻には笑われながらも、
何故かどうしてか、いつの間にやらすっかりと腹巻き化、
これがないと途端に風邪を引くどころか、
そう、病気に対する警戒心のその結界の証。

そうそう、このマスク、これだけは自身の戒めとして・・

と取り出したマスク・・マスク・・!?
え?と思わず声をあげた。
あいつ、あいつ、マスクしていたっけか?

電話を鳴らしても出ない。出ない出ない、
こういう時に限って出ない・・
であれば、とテキストを送る。

ねえ、マスクしてる?

え?してないよ、そんなもの、と妻。
混んでるの?
まあぼちぼちと。ただレジは凄い列だね。

出ろ、と思わず。
出ろ、今すぐそこを出ろ。

なんで?せっかく入れたのに。

いいから、早くそこから出ろ。

なんでよ、あったよトイレットペーパーもティッシュも、
あと、ブーくんのオヤツと、ポテトチップスとチョコレートと・・
ねえ、他に必要なものあるかな。缶詰とかも買っておく?

おい、いまどこだ?

いま地下一階から、二階に降りて、
あなたの好きなチーズデニッシュを買っておこうかと。

おい、そこを動くな。いまから行くから。

なんで?

なんででもなんでも、そこを動くな。いまマスクを持っていくから・・

来なくて良いよ、実は凄く混んでるんだから・・

入り口にまた新たに並び始めた人の列。
なんだよこいつら、いったいなんだってんだよ。
おいそこをどけ、店員の制止をすり抜けて、
そしてエスカレーターの階段を駆け下りる。

そして見たわすフロアにごった返す人ひとヒトの大群衆。
誰もがカート一杯に山積みにしてはいまにも崩れ落ちるほどに、
缶詰からクラッカーからトイレットペーパーから、
そしてなにを思ってから、一杯に山積みされたピーナッツバターから・・

こいつら、いったい、なにを考えているのか。

おい、いまどこだ?と電話を鳴らすが、え?不通?電波が届かない・・・

あいつ、二階に降りるって言ってたよな、と、
またまた人混みをかき分けて駆け下りる地下の冷食売り場。

いない、いったい、どこに行きやがったのか。

とそこでテキストが届いた。

いまどこ?

いまどこって、いま、地下二階の冷食売り場の。

えええ、なにやってるの?

なにが。

出ろって言うから、そのまま出てきちゃったのよ。

えええ!? だったらいまどこ?

だから入り口の前。
そしたらまた凄い行列ができてて、
もう戻れない。もう入れない。

バカバカしい。混んでるって言っても、
そんな入場制限をやるほどとも思えないけどな。

良いわよ、別にそこで買わなくても。
ちょっと高いけどトイレットペーパーなら角のデリにもあったし、
ティッシュだってまだまだ買い置きがあるし、
ポテトチップスもチョコレートも無くても死ぬようなものでもないし・・

バカバカしい、と俺。
だったら俺ももう帰るぜ。

だから、来なくて良いって言ったじゃないの。

だからお前がマスクしないから。

マスクなんて意味無いでしょ?

能書きは良いから早く帰って、手と顔を洗って、よくうがいをしろ。

なにをパニクってるのよ。たかがコロナじゃないの。
インフルと変わらないって、あなただってあれだけ言ってたのに。

そして見渡す店内。
その人ひとヒトでごった返す密室の中、
気がつけばその誰一人としてマスクをしていない。
ともすれば、そんな中で唯一マスクをした東洋人の俺、
その姿を、鬼の敵のように睨めつけては、
あるいは露骨に顔を背けては遠ざかる人々。

こいつら、いったいなにを考えているのだ。

巨大な買い物カートを押す人混みをかき分けて、
出口のエスカレーターを目指す。

待て、と静止される。
待て、順番だ。
順番?順番ってなんだよ。
このエスカレーターにも順番があるんだ。
その列の一番後ろに並べ。
並べって、俺は帰るだけなんだが。
その帰る為のエスカレーターに順番があるんだ。
バカバカしい。
店内の混雑を防ぐため、パニックを防ぐ為だ、文句を言うな。
聞いたようなことを抜かすな。
混雑ってったって、普段となにも変わらないじゃねえか。
でこのエスカレーターにしたって・・
おまえ、ガタガタ言うならガードマンを呼ぶぞ。
あのなあ、にいちゃん、たかがスーパーの店員が随分と偉そうじゃねえか。
階段を勝手に通せんぼしてゲシュタポ気取りか?
殴られたくなかったらさっさとそこをどけ。

そんなやり取りを、心の底からうんざりとした面持ちで見つめる人々。
私達だって待ってるのよ。
ここでこうしてこの糞エスカレーターを、
もう10分も15分も、ずっとずっと待っているのに・・

あのなあ、待つのが嫌ならさっさと帰ったら良い。
この先のホールフーズはガラガラだって言うぜ。
たかがダイム一個ニッケル一個をケチるために、
ここでいつまでも待ち続けるのか?
そのカゴに積みあげた糞パンが糞缶詰が糞トイレットペーパーが糞ピーナッツバターが、
それほど大切なものなのか?

騒ぎを聞きつけて駆けつけたフロアマネージャー。
思わずその胸ぐらを掴みかけながら、
てめえ、帰りたい客を足止めするとはどういう了見だ。
客をいったいなんだと思ってやがるんだ。
俺はなにも買わない。こんな店ではもう金輪際買い物はしない。
早くここから出せ、出しやがれ。
あのなあ、おまえら自分でやっていることが判ってるのか?
わざと客足を堰き止めては混雑を煽って群集心理を焚き付けて、
出口の行列に30分待ちかよ。
その炎上商売、やっていることが汚すぎる。
動画と一緒にツイッターにぶちまけてやるからそう思え。

マスクの下からそうがなる俺に手を焼いては、
レジに並ばずに帰るだけ、というのであれば、
では、このまま従業員用のエレベーターにご案内しますから、
と背中を押されては辿り着いたフロアの奥のエレベーターの前。
実はそこにもエレベーターを待つ人々が押すな押すなの黒山の人だかり。

その誰もがうんざりの山を通り越しては、
ともすればその俄な軟禁状態の中ですっかりとパニック状態。
早く帰りたい、早く出たいのに、
エレベーターが来ない、いつまで待っても来ないの。
暑い、なんかすごく息苦しい。
ねえ誰か水持っていない?水の売り場どこだったっけ?
早く出せ、この糞溜まりから早く出してくれ・・
その憤りの中でいまにもパニック寸前の人々。
であるのだが・・
こいつら、この大混雑の中で、ひとりもマスクをしていない・・
ってことは、
この中にひとりでも保菌者が居たとしたら、
ここにいる奴ら、あの爺さんもこの婆さんも、
この妊婦も、この子どもたちも、
ひとり残らずが感染ってことになるじゃねえか・・

おいおい、買い物に来たら、コロナ蔓延の密室に閉じ込められた
その邪悪な罠のおぞましさに思わず足が竦む。冷や汗がにじみ出てくる。

このパニックに駆られた群衆こそが、アウトブレイクの病床なのだ・・
この規制を制限を安全管理を理由とした足止めこそが、パンデミックのその原因なのだ・・

おい、と男が叫ぶ。
おい、なんだよこのエレベーター。
30分待っても全然やってこねえじゃねえか。
おい、店員、おい、マネージャー、
なんとか言ってみろ。
お前ら、この混雑をわざと画策してるんじゃねえのか?
これはわざとだ、作為だ、これは陰謀だ。
店内の混雑を避ける為に入場の人員整理をしている名目で、
その人員整理で作られる行列がまた群集心理を煽る相乗効果。
そのパニック的バーゲン効果の人心操作術。
そんな下心が見え見えだぞ。
こいつら雁首揃えてむざむざと騙されやがって。
オレは違うぞ、オレは騙されないぞ。
オレにはお前らのこの邪悪な策略がすべてお見通しだ。
いいか、オレは会議があるんだ、仕事があるんだ。
世界一忙しいオレ様をいつまでこんなところに縛り付けているつもりだ・・
馬鹿野郎、セキュリティを呼べ、警察を呼べ、弁護士を呼べ!
今すぐオレをここから出せ!

男の剣幕を前に人々の苛立ちがますます募る。
そして怒りが、そして不安が、そして恐怖が・・

やれやれだね、と隣りに立った痩せた中年の男が笑いかける。
まあ心にあることは誰もが同じなのだろうが、
それを口に出したからと言って・・

ところで、そのマスク、と男。
そのマスク、つまりは君は感染者ってこと?
まさか、と笑う俺。
心配するな、俺は感染者じゃない。
ただ・・
そう、ただ、だよな。
こんなところにひとりでもキャリアがまざっていたら・・
ここにいる全員があっという間に感染だよな・・
ボクはこう見えて、実は医者なんだよ。
え?お医者さん?
そう、お医者さん。まあ外科医なんだがね。
そのお医者さん的な見地からみて、この状況・・
最悪の最悪・・悪夢としか言いようがない・・
そう、つまりはそういうこと。
最悪な悪夢は人為的な作リ出されるもの・・
こんなところにマスクもせずにいる自分が自分でも信じられないよ。
下手したらそのまま二週間の自主監禁?
そうならないことを望むばかりなんだが・・
それは誰にも判らない。
そう、誰にも判らないんだよ。その判断は個人の良心に委ねるばかり・・
怖いな。
そう、ボクもそう思っていた。
このコロナ渦で、本気で恐怖を感じたのはこれが初めてだ。
そしてこの状況が、いま全米で、全世界で、起こっていること・・

そして漸く開いた業務用エレベーターの鉄の扉。
人混みを掻き分けていの一番に乗り込もうとした世界一忙しい男を、
しかし医師を名乗った痩せた男が、頑とした面持ちで押し止める。
おい、恥を知れ。
妊婦と、そして、ご老人が先だ。
なんだと、と振り返る男。
なんの権利があってそんなことを。
ねえねえ、まるでタイタニックみたいね、と笑う女。
女子供が先だ、なんて、なんだか、格好いいわ。
タイタニック?・・つまり俺たちは沈没寸前の船に乗っているってことなのかよ。
言い得て妙なり・・
知ったことか、と尚も抗う男の後ろから、
さあ、早く乗りなさい、と促された妊婦、
いまや顔中に冷や汗を滲ませてはパニック発作に卒倒寸前である。
次におばあちゃん、そして、おじいじゃん。
いやいや馬鹿にせんでくれ、ワシはまだまだ。それよりお嬢ちゃん、先にお乗りなさいな。
という訳で、最後の最後に乗り込んだエレベーター。
その鼻先で扉が閉まっては一安心。

ねえ、と誰かが呟く。
この中にひとりでも感染者がいたら、
私達みんな一緒に病院送りよね・・
そのふとした軽口に、誰もが俺を見ている、
その痛いほどに感じる不穏な視線・・
思わず、ここぞとばかりにマクスの中から空咳でも響かせてやろうか、
とは思いながら、それはあまりにも、まさに殺人的なまでの悪い冗談。

そして開いた扉の向こうから流れ込んできた朝の風。
助かった・・思わずそう呟いていた春の朝。

やばいな、と思っていた。
ついに始まったな、ここニューヨークでも。
都市というこの巨大なるタイタニック。
そしてこんなお祭り好きの、
そして筋金入りの利己主義者たちの間に、
まさかこのコロナのパニックが広がった時、
その時に、いったいどんな状況が巻き起こるのか・・



そんなこんなで妙な具合に足止めを食っては、
漸くと辿り着いた10時過ぎのオフィス。
とは言うものの、
そんな迂闊な遅刻者を咎める者は誰ひとりとしていない。
この漠然と広がるばかりの無人のオフィスには、
天井の風穴からの空調の風がいたずらに吹き込むばかり。

既に全社員に対して自宅勤務の言い渡された我社において、
しかし自転車通勤の可能な俺に限っては、
すっかりとお留守番役の出社当番。
その薄ら寒き伽藍堂のオフィスの真ん中で、
その効きすぎる空調に煽られては、
スーツの上からダウンジャケットを、
その上からコートを羽織っては毛糸の帽子まで被って、
その姿は凍死寸前のホームレスそのもの。
かじかむ指に息を吹きかけながら、
誰も観るもののいないブルームバーグのモニターを眺めては、
そして刻一刻と流れ続けるその株価の動向の上がり下がりの出来レース、
日がな一日その未曾有の大暴落の狂乱的な高騰の、
その歴史的な大商いの様を横目に見ながら、
そして舞い込んでくるニュースと言うニュースを、
片っ端から目を通してはうんざりの山を一つ越し二つ越し。

そして辿り着いた金曜日。
本日午後三時から大統領の緊急演説が予定されています、ステイト・オブ・エマージェンシーの緊急記者会見。

なにをいまさら、と鼻で嗤う。
ついこの間まで、やれでっち上げだ嘘八百だと、
大口叩いていたその舌の根も乾かぬうちに、
今度はこのコロナ災禍の波に乗っては、
このイカサマ博打の総仕上げでも繰り広げるつもりか。

いずれにしろその緊急演説が、
ろくでもないことには気がついていた。
その大事が危機が危険性がこれでもかと世界を震撼させていたその時に、
嘘だ、でっち上げだ、ペテンだ、まやかしだ、
そう鼻で嗤っては事態を軽く見た、その一ヶ月の間の、
その結果がこれ、この全米を巻き込むパンデミックス。

その責任逃れの言い訳の、
ともすればそれを逆手に取っては、
ここ一番と大見得を切っては、
選挙戦への一大逆転を狙う大博打、
つまりはいまとなっては誰もが辟易以外のなにものでもない、
この言い逃れのこの詭弁のこの大口ばかりの寅吉劇場、
その茶番的なまでの大舞台と。

ただ、とは思っていた。
今日のこの緊急宣言、
この薄らボケのその大口が大きければ大きいほどに、
その対策が具体的であればあるほどに、
それは決して、楽観的な要素などなにひとつとしてない、
つまりは、全米国民に対する死刑判決にもなる訳で、
であれば、三時の開始はちと早すぎる。

だって、その宣言がされたと同時に、
今朝から狂乱的な大高騰を続けていたこの株価、
それがまたまたいきなりの大急降下となる訳で、
それが3時であれば、4時のマーケットクローズを前にして、
またまたサーキット・ブレイカー発動、なんていう、
とんでもない大醜態を晒すことにもなる。

こいつら、コロナだ、パンデミックだと歌いながら、
どうせ腹の底で考えているのは、
選挙戦に向けた人気取りの印象操作、と、
そしてなによりこの株価、それ以外にはなにもない筈。

いったい何人感染しようが何人が犠牲になろうが、
そんなまやかしの数字にはなんの意味もない。

彼らにとって最も大切なのは、
その支持率と、そして、株価、
それ以外にいったいなにがあると言うのだ。

という訳で予想通りの筋書き通り、
3時開始と言われていたその大演説が、
やはり10分押し15分押して、
そして始まったのは3時半。

我々行政はとてもとても良くやっている。
チームは一致団結しては力の限りを尽くして、
このコロナ・パンデミックと勇敢に戦い続けている。
国民の皆さん、いまは戦いの時だ、戦時下なのだ。
行政が企業が大学が病院が軍隊が警察が各種研究機関が、
一丸となっては力をあわせ、
偉大なるアメリカの威厳を力をそのプライドを、
世界に示そうではないかかかかか。

そんな自画自賛ばかりの大口と、
そして50ビリオンの追加予算、
政軍産が一体となったその陳腐な対応策の列挙。

そんな明け透けな大演説を前にしながら、
しかしまたいつもの奴で皮肉屋の俺は、
右のモニターではホワイトハウス前からの中継を、
そして左のモニターではウォールストリートの市況のアップデートを、
そしてなによりその手元のIPHONEには、
世界各国の友人たちからのメッセージの山やまヤマ。
また例に寄って怒涛のようなして、
その耳寄りなインサイダー情報、
誰も知らないここだけの話の風評的パニック的あるいは希望的観測的なデマ情報の鉄砲水、
となる訳で・・

あのさあ、コロナコロナなんて騒いでいるが、
実はそんなもの、罹っても大したことはないんだぜ。
オレの友達の友達のその知り合いがコロナに感染したんだが、
一週間目に洟水が出て、二週間目から咳が出て熱がちょっと出て、
やべ、風邪引いたかな、と思っていたら、
三週目ぐらいには熱が引いて咳が収まって、
で四週目を迎える頃にはすっかりと元通り。

会社を休んだのも咳が酷かった二週目の二日間ぐらいで。
後はなにもなく、気に留めさえもせず。

確かに風邪にしてはちょっとしつこいかったが、
ただ、ガチのインフルエンザに比べたら全然大したこと無い、その程度。
それがコロナと気が付かなければ、
端から普通の風邪となんら変わることもなくなんの違いもなく・・

騙されるな。
コロナなんて全然大したことねえよ。
騒いでいるのは、新聞が売れる雑誌が売れる視聴率があがる、
そればっかりのマスゴミばかりなんだからよ・・

その次のメッセージには、窓を開けろ、とある。
部屋中の窓を開けろ。
コロナは空気感染はしない。
そして空気中では二分と持たない。
いますぐ窓を開けてドアを開けて、
そして外に出て風にあたれ。そして全身を日光消毒。
であれば一日中を犬の散歩。
公園の芝生で寝転がっていればコロナには罹らない・・・

次には、水を飲め、とある。
とにかく水を飲め、飲み続けろ。
コロナは喉に付着する。
それを洗い流し続けること。
15分おきに水を飲み、
そして部屋の湿度をあげて喉を乾燥から守り・・・

遂には、息をとめろ、と来る。
いますぐに息を止めてみろ。
十秒、二十秒、三十秒しても咳がでなければ、
おまえはコロナには感染していない・・・

コロナだ?ふざけるな。
すべてがすべてHOAX:でっち上げだ。
こんなものは普通のインフルともまったく変わらない。
ただ、それがこれほど大袈裟になってしまったその理由?

つまりは政治だ、そしてメディアだ、つまりは利権だ。
その国の抱える利権と政治的事情によって、
発表されるデータはすべていかさまなのだ。

発祥地としての醜聞とその責任逃れから、
そしてなによりなんとしても株価を下げたくなかった虫国の、
その患者数の、その犠牲者の公表が、
実はそこに、院外、つまりは病院に来ない来れない人々はカウントされていない。
つまりは?
そうつまりは、病院に来るな帰れ、と追い返された人々、
そしてなんの治療も受けられずに見捨てられた人々が、
その患者数にはそして犠牲者数にはまったく含まれていない。

あるいは日本。
オリンピックがやりたくてやりたくてしょうがない、
ただそれだけの理由で、
真実がバレることを恐れては医学の感染学の専門家さえもシャットアウトしては、
身内の役人ばかりで固めた隠蔽工作部隊。
そもそも検査キットがなければ、検査を受けられなければ、
患者数そのものが上がる訳がない、誰にも判らない。。
そんな子供じみた必殺技を連発しては、
なによりもなによりもなによりもオリンピックがやりたいの!
狂気の駄々っ子と化したマリオ君の断末魔の隠蔽工作。

そしてここアメリカである。
当初は、HOAX:でっち上げだ、と鼻で嗤っていた筈の、
その風邪に毛の生えたようななんちゃらが、
遂には世界中で火がついては飛び火しては燃え上がり。

で、これ、いままでのあのインフル騒動となにが違うわけ?
つまりは、これまで騒いでいたインフルとコロナが、
すっかりと綯い交ぜになってはそのまま全米中にばら撒かれ・・

それがなぜ起こったかと言えば、
他ならぬ寅吉親分、
なにを思ったか何の都合でか、
その危機管理の感染症の専門家たちのシンクタンクを、
経費削減とばかりに大量にレイオフ、なんていうことをしでかしたばかり。

その大失態を前にして、
次の大統領選に向けて、他ならぬ政敵の民主党から、
責任を追求されては命取りに成りうる、
その爆弾的事実をひた隠しに隠しては、
そんなものはHOAXだ、ペテンだ、大嘘だ、と惚け通しているそのうちに、
いつしかインフルまがいのこのコロナウイルスが、
はっと気がつけば全米中の津々浦々にばら撒かれては浸透を続け、
いまや手の下しようもなく・・

その恥の上塗りの大口三昧の誇大妄想狂そのものの自画自賛演説。

アメリカは大丈夫だ、俺も大丈夫だ、
そしてあんたらもたぶん、大丈夫だ・・
思わずそんな間の抜けた御大将の非常事態宣言を聞きながら、
その左のモニターに移るウォールストリートの市況の上がった下がったのそのジェットコースター。
そして次々と飛び込んでくるその市場の情報の噂の風評のデマのでっち上げ。
月曜日の大暴落からそして大反発の大高騰のその次の日のまた大暴落の・・
その上がった下がったの狂騒の中で、
それに必ず先駆けては先手を打ったJPなんちゃらとGMくそたれが、
いつの間にか知らぬうちに天文学的な利益を稼ぎ出していた・・・
つまりは?
バカバカしい。つまりはすべてが出来レースってことじゃねえか、と。

いまだから言えるがこれまでの寅吉政権。
その伝家の宝刀たるツイッターのメッセージ。
かの寅吉御大が、寝際の夜更けに一言、チャイナ、と呟くだけで、
その翌日には、必ず決まって株が上がって下がって、
そればっかりを繰り返してたつまりはいかさま博打の出来レース。

胴元がこれみよがしに賽の目を好きに操作してはあっちのひとこっちの人。
オレの友達にだけはその秘密のサインを教えてあげるからね、
そんなことばかりを繰り返していたこの寅吉ワールド。

世界中がそのボロいイカサマ博打のからくりを、
知っていながら知らないふりして←だ→だBBAB。

そして富めるものはより富み、富みまくっては節操をなくし、
そして持たざるものはなにからなにまでをむしり取られるばかり。

改めて、この世の富は無尽蔵ではない。
つまりは、得をする人がいればその分、損をする人もいる、
では改めて聞こう、このあまりにも富める人たち、
その富める人たちの富の代わりに、
損をぶっこいているのはいったい誰なのだ、と。

そしていまになって突如として襲いかかってきたこのコロナパニック。

非常事態宣言に向けたあまりにも仰々しくも英雄像さながらのその大演説。
寅吉御大の大元帥閣下の指揮の元、
我らが偉大なるアメリカの持てる力を騒動員しては一致団結して、
その大上段の大口が閉じられぬうちから、
並んだ記者団からの質疑応答が始まった途端にその空気がドンデン返し。

事態が発表されてから一ヶ月以上も、HOAXと嗤っては手をこまねいていた、
その責任をどうお考えなのか?

責任は・・責任はない!とれない、そんなものもともとオレのせいでもなんでもないし・・

そのあまりの大暴言に居並ぶ記者たちが唖然呆然。

あの、と某国の記者。
これ、このウイルス、元々、アメリカから持ち込まれたものと言う噂が・・

あの、とまたまた浅黒き某国人。
ウイルス云々よりもこの一週間で我が国の株価は急降下。
せっかくご融資いただいたそのミリオンがビリオンが、
一瞬のうちに煙と消えてはその借用書だけが残っちゃって・・
これ、まさか、おたくの仕組んだ出来レースじゃないんですよね?・・

で、大統領閣下、
あなたは最近にもコロナの保菌者たちと何の思慮もなく握手を交わし食事を共にし、
そんなあなたが、コロナの検査は受けたのですか?
いや、受けてない。
なぜ?
なぜって、まあそのうち・・
つまりは?
つまりは、寅吉はコロナに罹らない、その確証があることさえも匂わせる、
そのなんとも煮え切らない受け答えの数々。

いったいなんだんだよ、この非常事態宣言。

さあ、モノドモ! の声が聞こえる。
今度は売りだ。売って売って売りまくれ。
週明けの月曜日は朝からまたまた大商いになる筈だ・・

とそんな寅吉の確信的なシドロモドロの右往左往を前に、
バイデンが、そしてサンダースが、
虎視眈々とそのドサクサの火事場泥棒よろしく、
ひたひたと背後から忍び寄っては、
浮かれ騒ぐ裸の王様の、その喉元に蒼く光る刃先を食い込ませ・・

改めて、悪い、俺はこのコロナパニックを、
そのようにして見ている。

つまりはこれ、鉄人28号。
そのコントロール不能の巨大な怪物の、
そのリモコンを巡って世界中が右往左往の争奪戦。

世界を恐怖のどん底に叩き込むこのコロナ災禍の中で、
ある者はそこに商機を、
ある者は政敵追い落としの為の絶好機として、
この未曾有の化け物的ウイルスをどう使うのか、
バカとコロナは使いよう、
その狂騒の中で踊り踊れの春の宴。

まあしかし、と古き友人からのメッセージを思い出す。
確かにこのコロナ、まったくもってうざったいが、
ただこれによって、寅吉が、そしてアヴェが、そしてネチョウニョが、
つまりはこの現代社会の最低最悪の汚濁的なウイルスが、
きれいに一掃されるならば、安いものじゃねえか、と。

いずれにしろ、このコロナのパニックを前に、
これだけ醜態を晒し続けた寅吉もアヴェもすっかりと死に体だ。
あるいは・・
このコロナの波に乗じて奴らの息の根を止めない限り、
下手にあいつらに生き残られては、
それこそが、世界の終わり・・その最終章。

コロナを理由に反対デモを取り締り弾圧し抹殺し、
コロナを理由に一切の情報を遮断しては、
つまりは最低最悪の軟禁玉すだれ、
人類はその悪夢の地下室に、永遠に封じ込められることになる・・

そんな青臭き陰謀論者を前に、
まあしかし、とシニカルに鼻で嗤う俺。

だからと言って、バイデンがサンダースが人類の救世主かというと
どうしてもそんなイメージは抱けず、
あるいはここまで世界に蔓延しきったヘイトというウイルス、
そんな最低最悪のバイキンたちを駆逐するのが誰であっても、
いずれにしろその先にみえるのはその壮大なる尻拭い、
株価は大暴落、失業者が世界中に溢れ、
そしてまた新たなるウイルスが次から次へと新種に進化してはアップグレード、
そして次にはネット界を破壊し尽くすコンピューター・ウイルスが、
世界の土台のそのすべてを食い荒らしては増殖に増殖を繰り返し、
そしていずれにしろ至る先は似たりよったり。
つまりは?
つまりはそう、世界中が疑心暗鬼に雁字搦めにされる、
あの悪夢の底のディストピア・・・

なあ、と思わず。

昔あれだけ笑い転げた、未来世紀ブラジルのディストピアが、
今となっては、面白くもなんともない、ただの時代遅れの陳腐な紙芝居。
だって、あの未来世紀ブラジルの悪夢の光景を、
いまのこの時代はすっかりと通り過ぎてはまたその先のまた先。

で、そう言えば、この週末に、コンテイジョンって映画を見てさ。
2011年のオールスターキャストのパンデミックねたの恐怖パニック映画だったんだけど、
あれが公開された当時には、なんだかあんまりにも現実味が無さすぎて、
思い切り興醒めしては途中で観るのをやめてしまった覚えがあるのだが、
それがさ、いまこのコロナウイルス騒動のなかで見直したら、
んだよこれ、いまの現実の、まったくそのまま、これそのまんまじゃねえか、と。





であれば、とふと思いついたのが、
そう、あの、Vフォー・ヴェンデッタ、
あのマンガ的なまでのドツボのディストピアこそが、
まさにこの眼の前の現実の、その一歩手前というやつでさ。

そう言えばあの、Vフォー・ヴェンデッタ、
あの狂気の独裁者って、世界中に蔓延した疫病のパニック、
それを利用して成り上がった製薬会社のフィクサーの、
なんていう筋書きだったよな、と・・





そんな中でふと見回す時間の止まったニューヨークシティ。
その誰も居ないバス停の広告版に大写しになったナタリー・ポートマンの、
恐ろしいほどに妖艶な顔写真が、街中のそこかしこに貼り出されていて。

ともすれば、ジョーカーの狂気がバカにならない、
つまりはそう、時代は既に、そこまでその死刑台の階段を、
すでに登りきってしまっていたのかもしれない。





という訳で、時間の止まった街:非常事態宣言下のニューヨーク・シティ。
川向うのニュージャージーでは早々に野外外出禁止令が発令される中、
そしてここニューヨークにおいても、
ブロードウエイがメトロポリタンミュージアムがカーネギーホールが閉鎖を宣言し、
そのあまりのあまりに仰々しい仰々し過ぎる非常事態ぶり。

しかしながら、そう俺達とって一番大切なのは、
なにはなくとも犬の事情である。

コロナであろうが非常事態宣言であろうが、
犬の散歩にだけは出ないわけにはいかない、
その宿命的な自殺行を毎朝毎晩の日課としながら、
朝露に濡れたセントラルパーク、
ふと迷い込んだ東の丘、
枯れ木の賑わうその冬枯れの草原の真ん中に、
目に眩いほどの染井吉野の薄紅色の花が、
いまが盛りの咲き狂き。

サクラ?
こんな時期にサクラかよ・・

ほら、この冬は暖かかったでしょ?

今年は例年よりも半月も早くサクラが咲き乱れては、
ほら見てよ、とその指の先のそこかしこに、
夢の様に浮かぶ桃色の雲。

その一見して平和そのものの長閑な風景、
あまりにものほほんとした新春の風景を前に、
だがしかし、いまも聞こえてくるだろう、
あの木立の向こうのビル街の狭間から、
いまも鳴り響く救急車のサイレン。

まるでなにもかもが悪い夢の中にいるような、
そのあまりの断絶を前にして、
2020年、その歯車の何もかもが狂い始めた、
そのあまりにも不吉な狂い咲きの染井吉野。

木立の間から差し込む朝の陽光に当てられて、
早くも汗ばみはじめた肌の上に、
ざわざわざわざわ、その不気味が蠢きを感じ取っては、
鳥肌が消えるに消えない、そんな不穏な春の朝。

明日からすべての学校が休みになって、
そしてレストランもバーもクラブも閉鎖になるんだって。
つまりはここニューヨークが完全にその息の根を止められるという奴なんだな。

ねえもしかして、これで外出禁止令なんてことになったら・・
ああ、あの時、無理してでも缶詰とかトイレットペーパーとかピーナッツバターとか、
買っておくべきだったのかな・・

いやはや、つい先日ふと思い立っては、
斜め読みしたカミュのペスト、ではあったものの、
こうなると、次に読むのは、レニングラード包囲戦?
おいおい、この街で籠城戦の兵糧攻めかよ・・

まずは生き抜くことだ、なにがあってもなにをしても、
ではどうやって?
その具体的な対策が求められはじめている、
ここニューヨークの不穏な春、なのであった。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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