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コロナの時代の愛 その拾八 ~ コロナの時代の百鬼夜行:その後の仁義なき戦いの生き残り戦術

Posted by 高見鈴虫 on 15.2020 コロナの時代の愛   0 comments
実は最近、早朝の犬の散歩から見捨てられてばかりいる。
目を覚ますと既に犬の、そして妻の姿がない。
ええ、先に行っちゃったの?
起き抜けを襲うこの沈黙の底、その喪失感が半端ない。
思わず手元のIPHONEで妻にメッセージ。
いまどこ?
しばらくして、つまりはトイレを済ませマグカップ一杯の水を飲み、
顔を洗い歯を磨き、そしてコーヒーメーカーで珈琲を淹れるその間に、
腹筋腕立てヒンズースクワットの定番メニューをこなした頃になって、
ようやく妻からの返信が届く。

いまセントラル・パークでタオと一緒。

タオ・・ そうか、ブレンダか。

タオとはいま七ヶ月になるオーストラリアン・シェパード。
今年のはじめにタオがこのアパートにやってきたばかりの頃、
玄関先のロビーでいきなり出くわした我が家のブーくん、
三ヶ月の子犬らしく遮二無二じゃれついては問答無用に襲いかかったところを、
このこわーいおじさん犬から、いきなりのオン!! 
その鼻先で天地が奮えるほどの一声を浴びては、
思わず気を失うほどの大驚愕に唖然呆然と目を見開きながらも、
あなたは、あなたは、あなたはもしかしてボクのお父さん?・・
その勘違いをただただ暴走させ続けては、
いまや絶対服従の一の子分の金魚の糞。
午後五時、俺の仕事が終わっては、
さあ、散歩に出かけるか、とアパートの玄関前。
日中の世話を任されたハウス・キーパーのアンジェリカさんが、
やる気満々で待ち受けるタオの綱を引きながら肩を竦めては照れ笑い。

あの・・今日もお散歩、お願いできますか?

というわけでこのタオくん。
その飼主はと言えば、前回か前々回かにご登場頂いた、
あの美貌の救急女医のブレンダさん。
->コロナの時代の愛 その拾四 ~ EVIL EMPIRE バカにつける薬
かのTVシリーズ「クローザー」のヒロイン、
ブレンダ・ジョンソンを彷彿とさせる金髪美女。
その歯に衣着せぬサバサバとした物言いから、
しかしそこに色濃く残る素朴な南部訛り。
鋭敏と情感、辛辣と懇篤とを兼ね備えた美貌の女医さんである。

聞けばその出身がニューオリンズ近郊のルイジアナ州。
え?もしかして、とまさかと思って聞いてみれば、
ええ、本当に、本当にポート・アーサー?
あのジャニス・ジョプリンの生まれ故郷の?
->中元すず香とジャニス・ジョプリン ~ ベビーメタル劣化説への考察的見解 

という訳で、なんとも妙な因果に手繰り寄せられるように、
またまた犬の事情からの家族づきあいのご近所さん。

改めてこのコロナの渦中、その最前線で戦う正真正銘の勇者たち。
そんな医療関係者たちの姿を前にしては、
泣く子も黙るNYPDの鬼警部補から、
命知らずのNYFD、全身マッチョな消防士たちから、
ともすれば世界最強の軍隊:アメリカ陸軍の兵士たちからさえも、
最上級の敬意と憧憬を以ての直立不動の敬礼の義。
ここニューヨークの医療関係者の白衣の天使の皆さま、
まさにこのコロナ災禍に置ける正真正銘の救世主たちなのである。

いまや日々の恒例となった午後7時の大歓声。
そんな医療関係者たちの健闘を称えるために、
街中の人々が窓を開けては大歓声を響かせては、
そして街中のレストランからは、どうぞこれをお召し上がりください、
その貢物の差し入れのフルコースのご馳走が、
日々病院前に続々と山のように届けられる、
そう、いまこのコロナの最前線で戦う医療関係者こそは、
ニューヨークの、如いてはアメリカの世界の人類のその命運を握る、
真の勇者、正真正銘の英雄たちなのである。



という訳でここアッパーウエストサイドにおいても、
ご近所の英雄であるところのこのブレンダさん。
俺達からもなにかしてあげられることはないか、と聞いてみたところ、
あ、だったら、とお願いされたのがこのタオくんのお散歩のお役目。

ここのところ、ずっと激務に継ぐ激務で、
あんまりお散歩もしてあげられなくて。

日々の世話はハウス・キーパーのアンジェリカさんにお願いしてあるのだけれど、
当のタオくんが、お散歩はブッチ兄ちゃんと一緒に行きたい!
そう言っては聞かなくて、という話。

犬の散歩?それぐらいならお安い御用だと二つ返事で快諾しては、
午後五時のブーくんとの散歩に、
このタオくんもご同行ということになっていたのだが・・

そんなタオくん、そうか、朝の散歩もお願いされた、ということは、
ブレンダさん、そのコロナとの戦いの終盤戦、ますます忙しいのだな、
と思ってみれば、
え?帰って来てるの?
そうよ、いまブレンダさんは長期休暇中。

ここ一ヶ月以上、一日の休みもなく朝から晩まで働き詰め。
で、そんな医療崩壊のパニックが遂に終息を迎えつつある中で、
ここに来て、漸く漸く休みが取れた、という話。

で、そんなご休暇中のブレンダさんが朝の6時から犬の散歩?・・

そう言えば、最近妻が朝な夕なに妙にそそくさと、
犬を伴っては抜き足差し足と、秘密めいた失踪を遂げる、
そんな不穏な行動には気がついてた。

どこ行ってたの?
あ、ちょっと。

そのなにげなくもさりげない会話に、
あ、これは、ちょっと触れてはいけないなにか、
なにやら込み入った事情がありそうだ、とは思っていたのだが。

だがそう、我が家の愚妻は我が家の愚犬と一心同体にして、
その判で押したような鋼鉄の頑固者である。
特にこと、女同士の絆、その秘密に関しては、
なにがあっても、どんな誘導尋問を仕掛けても、
その迂闊な罠に目ざとく気がついては、
なんでそんなこときくの?と先手を打っては薄らとぼけ、
つまりは絶対にその秘密の真相の、その話を漏らそうとはしない。

という訳で、その真相が明らかになったのは同じ近所のお散歩仲間、
ブーくんの唯一絶対の大親友であるところの、
チェシーの飼い主であるところのエレイン婆さん。

ああ、それは、ブレンダよ、と。
ブレンダ?ってことはもしかして、うちのかみさんはレズビアン?
実はね、とエレイン婆さん。
まあ、あんただから言うんだけどさ、と前置きしては、
ここだけの話、ブレンダ、ちょっと、危ないのよ。
危ない?危ないって言うのはまさかSMのケが?
つまりは、そう、なんていうのか、
あ、だったら、やっぱりコロナに感染の疑い?
いや、そういうことじゃないのよ。
あんただって聞いたでしょ、この間のクオモからの調査報告。
ニューヨークにおける特異事例において、他国に比べて病院内の感染率が異様に低い。
つまりは米国の医療関係者の、医学知識がスキルレベルが、そしてなによりそのプロ意識が、
他国の医療関係者に比べて格段に勝っていたってことらしいんだけどね。
つまりはそう、あの午後7時の大歓声に一念奮起したブレンダみたいな豪快な女傑たちが、
日夜現場を取り仕切ってはエイエイオー!
アメリカの女子サッカーからソフトボールからチアーリーディングから、
そのスポーツ・ウーマン精神のチームワークの団結力の、そのプライドの誉れ。
女は強いのよ。とくにこのコロナの大災害の中にあって、
その最前線を戦ったファースト・レスポンダーのほとんどがナースたち。
人類の存亡を賭けたコロナとの戦い、
その絶対絶命の危機を救った最大の功労者は、
まさに女たち!
このウーマン・パワーだったのよ。

という訳で、そんなコロナ最前線の正真正銘のジャンヌ・ダルクであったブレンダさん。
そのブレンダさんが、危ない?

ほら、あんたの奥さん、みんなから凄く人気があるでしょ?
そうなの?
そうよ。みんな言ってるわよ。
あのブッチの家は、旦那が不甲斐ないのにあの奥さんはって、
OoPS、そういう話題じゃなかったわよね。
そう、あんたの奥さん、本職のサイコ・セラピストが舌を巻くぐらいに、
とてつもない癒やし能力がある人なのよ。
わたしもよく、用もないのに電話しちゃうんだけどさ、
あなたの奥さんと話してると、とても気分が落ち着くの。
声を聞いてるだけで毒が洗い流されては身も心も綺麗になって・
うちのかみさんはデットクス代わりってことかよ。
で、こんな時だからさ。ブレンダに言ったのよ。ブッチのママに話をしてみればって。
こんな時って?
あら、あんた、奥さんからなんにも聞いてないのね。
ブレンダ、休暇に入ってから一睡もしてないのよ。
一睡もしてない?
そう、ずっと寝てない、眠れないって。
でも、このコロナの最中は、毎日朝から晩まで休みもなく寝る暇さえもなくって言ってたけど。
そう、それなんだけどね。聞いたことある?PTSDって。
PTSD?つまりは、ポスト・トラウマティック・ストレス・ディスオーダー?
そう、そのPTSD。
ブレンダも自分がお医者さんだから、そのあたりの知識は当然持っていて、
この症状は、まさに、PTSDそのものだって。
本当だったら、お友達と会って、ワインでも飲んでって、
気の紛らわしようもあるんだろうけどさ。
このコロナのソーシャル・ディスタンシング、
お店もやってなければ友達とも会えないし、
それにほら、彼女、離婚したばかりでしょ?
え?そうなの?まだ指輪してたけど。
そう、そうなのよ、その離婚の訴訟の真っ最中にこのコロナの大騒動。
別れたご主人は?
地球の裏側なんだって。つまりはニュージーランド。
ニュージーランド?
そう、ブレンダの元夫も医者だって言うのにさ。
このコロナの騒ぎが始まってすぐに、
こりゃヤバイってすべての仕事ほったらかして
早々にニュージランドに逃げちゃって。
ブレンダにも、仕事なんて放っといてさっさと逃げろって言っていたらしんだけど。
ほら、ブレンダってああいう人だからさ。
つまりはニューヨーク医療界のミーガン・ラピノー。
チームの仲間たちを見捨てて逃げる訳にはいかないって。
でね、やっぱりね、色々あったらしいのよ。
初っ端から、同僚の何人かを立て続けに亡くして、
それをすべて自分の責任だってひとりで抱え込んでは、
その弔い合戦に負ける訳にはいかないって昼も夜もなく大奮闘。
このコロナの最前線にはそんなことがあったんだな。
私達ね、毎晩みんなでブレンダを囲んで飲み会をしてるのよ。
飲み会?
そう、ZOOMでみんなをつないでのWEB飲み会。
でさ、実は、ブレンダが寝ないのよ。
いつまでもいつまでも、ずっと飲み会から抜けないのよ。
でね、ひとりにしちゃいけないって、みんな気がついていて。
みんなでシフトを組んでは、ブレンダがZOOMに参加している間は誰かが必ず残るようにって。
で、ほら、わたしなんか、仕事もしてないし犬の散歩以外にはやることもない気楽な立場だからさ、
なので、昼に寝て、そして夜は朝までブレンダのお付き合い。
あんたも大変なんだな・・
でさ、こんなこと言っちゃって良いのかな、
色々あったらしいのよ、本当にいろいろなことが・・

という訳で、いや、これはまあ、エレイン婆さんからの又聞のただの噂のHOAX。
つまりこんなことを綴るからと言って、そんなことが実際に起こったなどとは、
この俺自身でさえこれっぽっちも信じる気はないのであるが、

と予め前置きしてはここからちょっとカテゴリー変更の「大人の語る怖い話」。

色々ね、あったらしいのよ、とエレイン婆さん。
病院中のベッドがどこもいっぱい。
通路にも廊下にも玄関先にさえ簡易ベッドを並べては、
それでも次から次へと押し寄せてくる患者たちで病院中が完全にパニック状態。
そんな地獄さながらの修羅の中で、ともすれば、医者から看護婦から患者から、
ともすれば、死んだ筈の人までもが入り乱れては・・
死んだ筈の人?
そう、後を着いてくるんだって言ってたわよ。
ほとんどの患者が、自分が死んだことにさえ気がついていないんだって。
あれ、風邪引いたかなって、額に手を当てた途端に熱が跳ね上がっては意識不明。
病院に担ぎ込まれたときも意識朦朧としたままで、
そのまま正気に戻らずにご昇天なんていう人達が山程居て。
そんな人達、自分がコロナに感染したことどころか自分が死んだことにさえ気が付かずに、
病院中を、ここはどこ、あなたは誰って、彷徨い歩いているらしいのよ。
でも、死んでるんだろ?
そう、死んでいる筈。さっきその死を看取っては何時何分、その死亡報告書にサインをしたばかりなのに。
その当の本人が、廊下で、トイレで、エレベーターの中で、
ともすれば他の患者を診察中の、その前で後ろの隣りに立って、
下手をすればその別の患者のベッドの上で、
ぜーぜーぜー、助けて、助けて、助けて、
息ができない息ができない息ができない、って。
おいおいおいおい・・
ある患者さんが、わたしの携帯はどこですか、
主人に連絡をしなくては、子どもたちに連絡をしなくてはって、
そう言って亡くなられた方が、いつまでたっても誰彼となく、
わたしの携帯はどこですか、わたしのIPHONEはどこですかって・・
でもね、実際に病院で走り回っている人たちにとってはそれどころじゃなくて、
あんたはうるさい! 
あんたはもう死んだんだから、お願いだから邪魔をしないでRIP!
そこで静かに寝ていてって。
でそのご遺体も誰も引き取り手もなく連絡先さえ判らないままに、
霊安室から、倉庫から、廊下からに山積みにされたままで、
病院の裏口にはその死体を運ぶフォークリフトのワーカーから臨時安置用の冷凍トラックの運ちゃんから、
遺族から関係者から患者からその予備軍から、
警察から兵隊から牧師から葬儀屋から霊柩車の運転手からがしっちゃかめっちゃかに入り乱れては・・
そんな中に幽霊のひとりふたりが紛れ込んでいたって誰も気づきはしない、と。
なんか、それ、ガルシア・マルケスの世界そのものだな。
そうなのよ、もう、現世も幻想も、あの世もこの世も、しっちゃかめっちゃかに入り乱れては、
死人から、死体から、亡霊から、幽霊から、有象無象の百鬼夜行の地獄絵図の中で、
お願い、そこをどいて、わたしの邪魔をしないでって。
生きる人たちが優先、生き残る人たちがなによりも優先なんだからって。
ブレンダ言ってたわよ。
これだけは自慢できるって。
この世の医者で、私ほど沢山の患者の死に立ち会った医者はいないって。
凄い、凄すぎる話だな。
ブレンダはそれを、あの調子で笑いながら言うのよ。
わたしほどたくさんの患者を見送った医者はないわよ、ギネスブックものよって。
つまりは、私ほど沢山の患者を見殺しにした医者もいない。
それこそ正真正銘のクローザー。 
ドクター・スリープとは私のことよって。
この僅か二ヶ月の間に、ここニューヨーク市だけでも、
実に二万人の人々が一挙に命を失ったのである。
死者二万人、それがいったいどんな数になるのか、まるで見当もつかない。
実はね、あの人工呼吸器の不足が深刻化していた時、
その優先度をどうするかって時にね、
既に昏睡状態である筈のおばあちゃんがいきなり目を開けて、
わたしのこれを他の方に譲ってくれって。
それを外した途端に、ありがとう、って言いながら、
その姿が二重映しなってふっと宙に浮かび上がって。
ありがとう、ありがとう、おばあちゃんありがとうって。
そして疲労困憊で倒れ込んだ仮眠ベッドの中で、
夢に魘されては死んだはずの患者たちに周りを囲まれて、
ふとするとまだ自分が病室を駆けずり回っては、、
で、ともすれば、自分が患者になって自分自身に看取られて・・
もうそんな話、数え上げたらキリが無いくらい。
そんな話をね、毎晩毎晩、夜が明けるまで・・

怖いって言ってたわ。
いまになって、この休暇に入った途端に、
突然怖くなったんだって。
眠るのが怖い、ひとりになるのが怖い、
沈黙が怖い、騒音が怖い、
食べるのが怖い、シャワーが怖い、水が怖い、火が怖い・・
目を瞑った途端、正気に戻った途端、
いきなりあの光景の中に引きずり込まれては・・

PTSDだな。
そう、PTSDの典型的な症状。
ねえ、とエレイン婆さん。
ねえ、そう言えば、あなたにも経験があるって言ってたわよね、
その、PTSD。
ああ、昔の昔、旅の途中で紛争地に迷い込んじゃってさ。
旅を続けてる間は自覚することが無かったんだけど、
日本に帰ってからだよね。
眠れなくて、苛ついて、始終なにかに怯えていて、
そして何かに対して無性に腹を立てていて。
で、その特効薬ってなんなの?
俺は、と思わず仰ぎ見る空。
あの頃の俺は、朝まで歌舞伎町の裏通り、
チャイニーズ・マフィアが占拠した日本で唯一の無法地帯のそのど真ん中、
朝まであの血みどろの修羅の街をうろついては・・
そして帰り着いたマンションの個室。
同じフロアに住んでいたフィリピンからのじゃぱゆきさんの娼婦たち。
その中に、ミンダナオ島出身の女の子が居てさ。
当時はまだPSTDなんてものは誰も知らなかったんだけど、
あなたは戦争の悪魔に魅入られているって。
ひとりになっちゃいけない、魂を持っていかれてしまうからって。
そんな訳で朝から晩まであのフィリピン人の女の子たちに囲まれては、
あの時、新大久保のライオンズマンションの窓から見ていた、
砂色の空に浮かぶ武富士の看板の風景と、
南国の娘たちの、あの褐色の妙にひんやりとした肌触り・・
で、とエレイン婆さん。
で、PTSD、どうすれば治るの?
治らないよ、と俺。
あれは治らない。いまでも覚えている。
いまでも、なにかがある度に克明に思い出す、
あのフラッシュバックの発作は一生忘れ去られることはない。
戦場で出会った奴等は、帰ってくるって言ってたな。
帰ってくる?
そう、ひとたび戦場を経験したものは、必ず戦場に帰ってくるって。
もう、常人の世界では、暮らしていくことができないからって。
兵士は必ず、その死に場所を求めて戦場に舞い戻ってくるって。
あなたは、戦場には戻らなかったの?戻らずに済んだの?
はは、俺にとっちゃここニューヨークが世界で最恐最凶の戦場だからな。
日本はそうじゃないのね?
ああ、日本は’そうじゃない。俺にとっての日本は、故郷というよりは、
言うよりは?
安息の地、というよりは、あの武富士の看板。
あの砂色の空の、殺伐としたコンクリートジャングルの、
そう、あの、PTSDの悪夢を彷徨い続けた、あの時の記憶のそのままに・・
奥さんとは、そんな時に会ったのね?
ああ、帰国して一年して、
ようやくそんなPTSDの発作から覚めては、
そう言えばあの頃、口癖のようにして、
そろそろまたあの戦場に舞い戻ろうか、
そんなことばかり言っていたような。
そう、いまになって思い出した。
七転八倒の末に遂に遂に妻に思いを告げた時、
土砂降りの雨の中を深夜になって辿り着いたドアを叩きながら、
もしも応えてくれなければ、
このまま、この足で、香港に飛んではタイを経由して、
中東か、アフリカか、中南米か、あの血湧き肉躍る修羅の巷に、
そのまま舞い戻ってしまおうと、それならそれで別に良いか、と、
そんなことを思っていたんだったよな・・
そして、応えてくれたのね?
ああ、幸か不幸か。
それからずっと、一緒なのね?
ああ、それからずっとずっとの腐れ縁。
つまりはそういうことよ、とエレイン婆さん。
つまりはそういうこと。あなたをこの世につなぎとめているのは、
あの奥さん、あの人の存在が、あなたにとっての唯一の命綱ってことなのよ。

という訳で、夜が明けたと同時にブレンダさん、
いの一番にうちのかみさんに電話をしては、
おはよ、ねえ、お散歩に行かない?と。

ブッチとタオ、この生きる活力の塊りのような子たちと一緒に、
夜明けのセントラルパーク。春の新緑に満ちた生命の爆発の中で、
ああ、生きていて良かったって、本当に本当にそう思ってるって。

そう、いまも俺は、いまになったからこそ、俺は言い切れる。
あの時、かみさんがドアを開けてくれなかったら、
ビギナーズ・ラックを使い果たして抜け殻状態にあった俺は、
死に場所として舞い戻ったその戦場において、
お望み通りの犬死を遂げては無縁仏の大往生。
あるいはもしも、そんな旅にもでれずに、
あの砂色の街に幽閉されていたとしたら、
十中八九、その行く末は、塀の向こうか拘束服の檻の中か
あるいはそれは、コンクリート詰めの海の底・・

そして昼も近くなって、カランと鳴る玄関のドア。
途端に息を荒立てて走り込んでいくる我が駄犬。

おおお、帰ってきたか、タオは元気だったか?

そのまま犬に促されるままに浴室に連れられては、
足を洗い、身体を拭って、全身のマッサージ。

その後ろから、ああ、疲れた、と妻。

チェリーヒルから、ランブルを回って、シーダーヒルを回って、
グレートローンから、貯水池を過ぎてテニスコートまで行って、
その後に今度は、東側に抜けてそのままイーストリバー沿いのコンコース。
トラムウエイのケーブルカーに乗ってルーズベルトアイランドに行こうかって言われたんだけど、
さすがにそれは断って、だったらと、AMCの前から、
またまた歩いて歩いてようやくセントラルパークに帰って来て、
グランド・アーミー・プラザからプラザホテルから、
その後、動物園の前を通って、池を回ってウールマンリンクから、回転木馬から、
シープス・メドウを横切って、タバーン・オン・ザ・グリーンに辿り着いて、
そしてようやくようやく帰って来たよ、もう6時間も歩いて足が棒で・・

それだけ歩けば、ブレンダさんもよく眠れることだろうな。
そうそう、これだけ歩けば眠くなる筈よ。それだけは保証済み。

そのままシャワーに飛び込んだ妻を残して、
ねえ、お腹へった、と訴える我が犬に遅い朝食を与えながら、
そしてつけっぱなしのチャンネル7:ABCニュース、
クオモ知事からの会見が始まったところ。

コロナから生還した筈の子どもたちの間に、
川崎病に似た、謎の感染症が広まりつつある・・

なんだって?
子供たちは安全じゃ無かったのかよ?・・・

シャワーから上がり濡れた髪のまま、冷めた珈琲をすする妻が、

そうそう、これ、ブレンダさんも言ってたよ。

実はブレンダさん、このまま医者を辞めようと思ってたらしいんだけどさ。
この川崎病の話を聞いて、こんなことはしていられないと。

つまり、病院に戻る?

そう、そう言ってた。
二週間の休暇を途中で切り上げて、来週から病院に戻ることにしたって。

おいおい、筋金入りの医療戦士だな、あの人も・・

ただね、病院に戻ろうって決めた途端に、
不眠症から神経症から、
PTSDのすべてが嘘のように治ったって。
今日もずっと、お腹減ったお腹へったって、そればっかり。

今週末、セントラルパークでみんなでパーティをやることにしたの。
各自が2メートル間隔の円陣を組んで、
その真中にワインと料理をこれでもかって並べて、
そこら中のお店からこれでもかってデリバリのケータリングを頼んで。

俺も行って良いかな?
あなたはダメ。これは女ばかりのガールズ・パーティなの。
女の女による女ばかりの戦勝祝賀会。

女か、侮れないよな、女たち・・

ポストコロナは、女たちの時代よ。
もう男たちの好きになんてさせないって。

このコロナの被害をここまで拡大したのは、
馬鹿な男たちの慢心のせいなのよって。
そしてそんなコロナ地獄を生き抜けたのは、
他でもない、医療の最前線を戦った女たちの力なの。
社会はそれを思い知るべきだって。

おいおい、世界中からアマゾネス戦士の斎の声が聞こえるようだな。

病院関係者が一丸となって、打倒寅吉の大集会を始めるんだって。

もう、死者を見送るのは沢山だって。
もう子どもたちの苦しむ様は見たくないって。

全米の医療関係者が手を結んで打倒寅吉
このヘイトと憎悪と陰謀論の時代から、
美と、愛と、可愛いさの時代が始まるのよ。

なんかそれって、あのベビーメタルのテーマ、そのもののような・・

覚えておいて、ポスト・コロナの時代は、女たちの時代なの。

このコロナの災禍と合わせて、無知な男たちのウイルス、
ヘイトと憎悪と陰謀論のすべてを、一掃してやるわって。

そう、ブレンダが言ってたの?
そう、ブレンダがそう言っていたの。
ここで声をあげなくては、世界は本当の本当に、とんでもないことになってしまうって。

ヘイトは、憎悪は、陰謀論は、コロナのウイルスと同じなの。
放って置くと、手をこまねいて見ているばかりだと、
それはどんどんどんどん広がって、
世界中の人々の命を食い荒らしていくことになる。

それを止められるのは、女の力だって。
世界中の女たちが、積極的に声をあげなければ、
世界はまたまた、第二第三のコロナ、
それは第二波だ、第三波だ、なんてことじゃなくて、
それこそ、このヘイトのウイルスの感染拡大によって、
とてつもない人々が死ぬことになるって。
それを止めることができるのは、女の力しかないんだって。




(都合により削除WW)





いやあ、ベビーメタルの薀蓄を読もうと思ったら、
んだお、いきなりこんな気味の悪い話しを聞かされて、
思わず目が点テン、おつむ点々の皆さま。

まあ確かに、え?あのすぅめたるが、最愛メタルが、
#検察庁法改正案に抗議します にツイート!?

なんてことになったら、それはそれでちょっとぶっ飛ぶかも知れないが・笑

そう、ベビーメタルはその宿命として、
その思いのすべては、ステージの上のパフォーマンスで物語る、
その真理を曲げて頂きたくはない、
それこそが、本心からの正直な気持ち。

なんだけど、敢えてこの糞檄文の最後に、
ベビーメタルの名前をあげた理由なんだが、

そう、これからは女性の時代のようだ。

この女の時代がなにを意味するかと言えば、
女性たち積極的に思い切り腹を据えて社会参加を促すこと。
それ以外に、もう人類は両足を棺桶に突っ込んでいるその状態、
このドグマから抜け出す方法はもう残されてはいないのかもしれない。

そんな修羅の時代を戦う女性たちのテーマソング:応援歌として、
ベビーメタル以上にうってつけの人々はこの世にはいない、と。

ぶっちゃけ、後ろ頭を輝かせた黒ずくめのおさんたちの時代から、
ベビーメタルのその主戦力となるのは、まさしく女性たち。

宝塚親衛隊から中ピ連から地下アイドルたちからその予備軍から、
鬼のキャリアウーマンから、ホスト遊びに飽き飽きしたキャバ嬢たちから、
そして新たな時代の息吹に敏感に反応した女子学生たち。
ベビーメタルは、そんな時代を担う戦う女性たちの守護神となるべき人々。

このコロナのカタストロフィの大番狂わせの中で、
YMYのねちょうにょドルオタ路線から、
残骸的筋金入りロック馬鹿たちの時代を経て、
そしていま、ベビーメタルはメタル・ギャラクシーの新時代、
その主軸となるのはまさに、女性ファンたち。
自我に目覚めた女性たちが、
ベビーメタルの勇士を前に新たな自分探しの旅に出る、
そんな時代がやってくるのでは、と思っています。

改めて、そんな新時代的新生物的新参メイトたちを、
心からの感謝と共感と尊敬を以て迎え入れるために、
俺たち古参メイトたちとしても、
筋金入りベビーメタル・メイトとして恥ずかしくない、
自分力、自我力の鍛錬に励まねばならないと思っている。

そのテーマとなるのは?
美力? 財力? 筋力? 
いやもうそんな時代ではないだろう。

このポスト・コロナの時代を生き抜くため、
その究極の力とは、インテリジェンス。
つまりは、知力、というよりは、哲学力。
あるいは、その総括的な意味での、人間力。

ぶっちゃけ「愛」への理解度、なのではないのか、と。

安易な愛国ポルノ的プロパガンダに騙されず、
甘美な宗教的な誘惑の罠を余裕でいなし、
改めて新時代を生き抜くためのグローバルな視野、
これまでベビーメタルと伴に世界を巡って思ったこと、
異国の地で見たベビーメタルがどうであったのか、
そして、海の向こうから日本の姿がいったいどう見えたのか、
そしてなにより、この世界は一体どこに向かっているのか、
その多元的視野を含めた上でのグローバルな愛の概念こそが、
新時代を戦う女性たちとの、唯一の接点、なのではないのか、と。

それを踏まえた上で、改めて、そのウォーミングアップ代わりに、
#検察庁法改正案に抗議します 
このムーブメントにどう対峙するべきなのか、
そしてそれはいったいそれはなぜなのか、
5WHYのフィッシュボーン解析、
その理論武装を、初めるべきなのではないのかな、と。

少なくとも、長いものには巻かれては君子危うきに近寄らず、
そんな打算的処世術を吐いた途端、こいつはルーザー、
そのひとことで鼻で嗤われる、
そう、ベビーメタルに感化された女戦士たちは、
その見た目の可憐さとは思いも寄らず、
一筋縄ではいかない、正真正銘の知的アマゾネスたちであるに違いない。

少なくとも、YMY、そんな幼気なドルオタ諸氏、
なんかあのひとたち、ヤマシタキヨシ、みたいで、笑える、
そんなことを嘯かれること、覚悟しておいたほうが良いぜ、と。

という訳でこんな俺も、すっかりと害毒ファン扱いされないように、
ちょっくらそろそろ本腰を入れて、ポスト・コロナの時代の生き残り戦術、
様々なソースから、探り始めたほうが良さそうだな、と。

その手始めに、まずはちょっと真剣に、
かみさんのご機嫌、じゃなかった、そう、その考えとやらを、
真面目の真面目に聞いてみてみようかな、と、
そんな辛勝なことを思っているコロナの春。

改めてこの正真正銘の百鬼夜行のポスト・コロナ社会、
その新たなる時代の生き残り戦術、
老若男女を問わず、その率直なご意見を、お伺いできれば幸いです、と。

ではでは



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
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©終末を疾うに過ぎて...
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