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このところ顔つきが変わったな、とよく言われる

Posted by 高見鈴虫 on 02.2012 ニューヨーク徒然
情けない話ながら、
このところ顔つきが変わったな、とよく言われている。

普段から自分の顔などほとんど注意して見ることがない事情から、
そんなことを言われてもピンと来ないのだが、
言われて見ればそうかな、と思わないでもない。

俺が生活の中で唯一自身の顔を見るとき、というと、
それはすでに会社のトイレで手を洗う時だけに限られてしまう訳だが、
ふと鏡を見ると、笑っている自分がそこにいる。

先日久しぶりに会った若い奴からも
ほんと丸くなりましたよね~。
現場変わったからっすか?
なんかちょっとうらやましな、とかなんとか。

しかしながら、だ、
ご存知のように、
少なくともこの目の前のこの現実において、
人にうらやまれることなど何一つとしてないのは、
自他共に明らか。
しかしながらこんな事態においてさえ、
にたにた笑って過ごしているこの俺とは、いったい何者なのか。

ふと考えるに、やはり犬のせいかな、と思ってみる。

確かに、犬を飼ってからというもの、
自分が心底愛するものに、
自分自身が心底愛されまくっているというこの究極の両想い感に、
日夜包まれ、浸りきって暮らしているわけで、
そういえばこんな感覚、いままでの人生では味わったことがなかったな、
と改めて気づかされる。

確かに、犬を飼ってからというもの、
多少、どころか、ほとんど思い切り、
それこそERに担ぎ込まれた、なんて時でさえ、
腕に刺さった点滴をみつめながら、
やばいな、こんなものぶら下げられちまっては犬の散歩に行けないぜ、
いい加減、ぶっちぎって裏口からばっくれてやるか、
などと、そんな悠長なことを考えていたのだ。

確かに、犬の写真を壁紙に設定してから、
トラブルの最中、血走った目でモニターを睨みながら、
ふと閉じたページの向こうから、いきなり大口を開けてガハハ笑いをする
我が家の犬の写真などを見ると、
修羅場の途中でありながら、おもわず、にたー、と笑ってしまったりもするものだ。

と言うわけで、
我ながら、この事態、つまり、笑っている俺、なんてものを見るたびに、
思わず、え!?としてしまう訳なのだが、
そんな自分の笑顔を見るたびに、思わず犬の顔を思いだして、
膝の上に、あるはずのその頭を、思わず、
撫で撫で、なんて真似をしてしまったりもする。

賭けてもいいが、これまでの人生で、
どんな女にだって、どんなダチにだって、
俺はそんな感情を抱いたことは一度足りともなかった。
そもそも、可愛いものが好き、なんて感情は、
普通の男はあまり持ち合わせていないはずだろう、と。

それが、それが、だ。

いやはや、この俺がねえ、と思わず自分自身につぶやいてしまう。

やれやれ、あいつらがこんな俺をみたら、
いったいなんだって言いやがるんだろうな、と思わず苦笑い。
バツが悪いってのはこういう感情をいうんだろうな。

大丈夫、ガキども、心配すんなって。
俺はなにひとつ変わっちゃいねえって。
だから、早いところ、でかいギグのひとつふたつ、もってこいや、
なんて憎まれ口を叩きながら、
実はここだけの話、ちょっとね、実はね、
そう、犬と過ごす時間の甘さがあまりに心地よいもので、
ってのは言い訳だが、
まじっこ、ついつい、そう、ついつい、と言いながらここ1ヶ月2ヶ月3ヶ月、
俺はぜんぜん、まったく、なんの、練習していなかったりするわけだ。

大丈夫。
マイルスじゃないが、
演りたい、と思うまでは演らなくてもいいんだ。
心配するなって、演りたい、と思ったときにはまたすぐに戻ってくるさ、と。

そうそう、その通り、だからちょっとね、息抜き中、とは言いながら、
やはり心のそこでは焦りまくっているわけだな。

あのなあ、おっさん、そんな暢気な面して、
VBAなんか書いてる場合かよ。

テニスからもギグからも、どころか、練習からも遠ざかって、
お前はただの犬の散歩のおじさん、それだけじゃねえか。

あっそうか、そういうわけか。

俺はここのところ、
テニスとギグと現場の修羅場、
つまりはこれまでの半生を支えていたすべて、
つまりは緊張を要する事態、という奴から、
徹底的に遠ざかっているわけなのだな。

なんだ、つまりは、そう、それだけ、という訳か。

という訳で、ごめん。言い換えるべえ。

最近顔つきが変わったのは、

テニスからもギグからも現場の修羅場からも遠ざかり過ぎた、
怠けまくったその結果、という訳なんだよ。

なんだ、と思わず。

本当に人間が丸くなれたのか、と思ってもいたのだが、
そう、丸くなるのは養老院にはいってからでも間に合うだろう。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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