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TRAVEL AND RESEARCH

Posted by 高見鈴虫 on 21.2012 とかいぐらし
事情があって、久々に自身のレジメ、
つまりは履歴書を更新することになった。

で、いつものように適当に、職歴に直接関係のあるところだけ、
と考えていたのだが、
どうも今回は事情が事情だけにそういう訳にも行かず、

という訳で、高校卒業から始まって、
じっくりと己の半生と向かい合うことになった訳で、
と、とたん、う~ん、と脂汗。
これはこれは。

高校を出てからの一年間、
実はバンドをやっていたわけだが、まあこれは浪人で済む。
大学の留年も、
実はバンドをやっていたわけだが、まあこれも、研究のため、で済む。
で、問題はその後だ。

卒業してから云年間、果たしてなにをしていたのか?

まあ、実はバンドをやめて旅をしていた訳だが、
まさかここに来て、実はバンドをやめて旅をしてました、
とも書けるわけもなく。

という訳で、果たして絶望的に途方にくれていた訳だ。

と、ふと見ると携帯にメッセージ。

ドッグランで待つ、といつもの猛犬仲間から。

まあ気晴らしにでもでかけてみるか、と行ってみたのだが。

***

で、困ってるって訳だよ。

なんで?

なんでって、まさかバンドやってました、やら、ヒッピーやって世界中を貧乏旅行、
なんて書けないだろ?

なんで?

なんでって、なにがだよ。

なんで書けないの?書けばいいじゃない。

バンドやってヒッピーやってましたって?まさか。

まさかってなによ。

バンドやってヒッピーやってました。
つまりは、
セックス ドラッグス、ロックンロール、してました。ピースってか?無理だよ。書けない。

なんで書けないの?そのとおり書けばいいのよ。バンドやってインドを旅行してました。なにも悪いことないじゃない。

だってね、普通、バンドやってインドを旅してました、なんて言ったら、
どうせまた、チープセックスとドラッグとロックンロール、なんてのぼせたんだろ、って思われるだろ?

のぼせてたの?

のぼせてたよ。

セックス、ドラッグス、ロックンロール?

そう。チープ・セックス、バッド・ドラッグ、ロックンロール・スーサイド。なんでもやってたよ。

やるわね。

やるわね、じゃなくて、そんなことレジメに書けないって。

どのくらいそれやってたの?

大学出てからアメリカに来るまで、まあ2、3年ぐらいかな。
まあその前からずっとそんな感じだったけど。

あれまあ、やるわねえ、日本人。

だから日本にいられなくなった、って訳で。

書けばいいのよ。そのとおり。バンドやって世界を旅してました。なにが悪い?

やれやれ、そんな事書いたら一環の終わりだ。

終わな訳ないじゃない。あんたが何を言ってるか判らないわよ。誰だって若いころは多かれ少なかれそういうことをするものよ。2-3年旅をしていたからなんだっていうの?若い頃はみんなそうでしょ。隠すことないわ。バンドやって世界を旅してました。世界中で友達を作って素晴らしい経験をしました。おしまい。なにが悪いの?

が、世間はそういう訳にはいかない、ものでしょ?

あのね、いかないのは、日本の会社だからじゃない?少なくともアメリカではそんなことないわよ。昔いろいろなことをやっていたのは、アメリカでは逆に面接官の目に留まって好印象を持たれる可能性大よ。

インドを乞食旅行して、訳の判らない薬をきめては、見ず知らずの子とセックスばかりしてました。ロックンロールがすきだったので、ってか?まさか。まともな人間とは思えない。

インドを乞食旅行もせずに、ドラッグも知らずに、女の子と遊んだこともないような人が普通の人間とは思えないわ。

まさか、正気で言っているとは思えない。

判った。魔法のコトバを教えて上げる。いい?こう書くのよ。

TRAVEL AND RESEARCH

なにそれ?

つまり、小説を書こうとして、世界を回っていました。小説は未完でしたが、人生というストーリーはまだ続いています。どう?格好良いじゃない。

何年間、TRAVEL AND RESEARCH

騙された、と思ってそう書きなさい。少なくともレジメに空白があるよりもずっといいわ。

本当の本当に?と辺りを見回すと、そこにいた人々が、一同に、YES。NO PROOBLEM!

ほんとかよ。本当の本当に?
俺まじで、セックスドラッグスロックンロールだったんだぜ。

SO WHAT!? 何が悪い?若いってのはそんなものさ。

まじかよ。

という訳で、半信半疑ながら、
大学を出て3年間、TRAVEL AND RESEARCH と書き加えたのち、
研究のため、アジア、中近東、アフリカ、ヨーロッパ、を経て、アメリカに至る、と書き加えた。

あのなあ、もしもこんなレジメが通ってしまったとしたら・・・
アメリカって国は、まじで、とんでもなく寛容な国だってことだぜ。

で、

ふと、

TRAVEL AND RESEARCHの文字の中に、

あの旅の情景が目に浮かんで来た。

初めての外国、香港ネーザンロードの真ん中で、おまんこ!と叫んで以来、

俺は日本という国を離れることができたその開放感から、
日本という国で暮らしてきたことの超反動、
徹底的に、まさに徹底的に、
セックスドラッグスアンドロックンロールの世界を突っ走った。

タイでは場末の娼婦達とドヤ街で暮らし、
カルカッタでは朝から晩まで徹底的にラリラリで、
道端に寝ているところをよくホテルまで運ばれたものだ。
シッキムでは戦争に巻き込まれ、レジスタンス運動の片棒を担ぎ、
カトマンズではダルバール広場の浮浪児達とつるんで小遣い稼ぎのドラッグディーラー。
ポカラではコミューンに暮らして宇宙の真理について語り合い、
バラナシではタブラの修行の為に寺に篭っては、
憑かれたようにインド哲学を勉強し、
生と死に触れ感じ考え、
その余興にスゥエーデン人のバンドマン崩れとつるんでは、
新入りの旅行者たちを愛だ平和だと騙しながらいただきセックスばかりしていた。
パキスタンからその先ではまじめに戦争に巻き込まれ、
ここで死んだらたぶんバチがあったのだろう、とまじめに考えていたし、
死にものぐるいでマシンガンをぶっ放したり、
地雷を踏みそこなった時には十中八九、これで終わった、と覚悟した。
イランでは空襲の下を逃げまわり、
トルコではいかさまバックギャモン師として生計を立てていた。
ギリシャでは街頭バンドにゲスト出演したのを機にいなせなバンドマン暮らし。
ロンドンからやってきたフーリーガンの奴らとつるんでいたら危うく留置場に打ち込まれそうになったり、
喧嘩武者修行中のキックボクサーとつるんでキャッチバーに殴りこみをかけたり。
ナイロビからの女の子と知り合いまじめに結婚しようかとさえ考えた。
エジプトでは真夜中のピラミッドに忍び込んで銃で打たれそうになったり、
モロッコでは夜明けのサハラ砂漠に頭からダイブして、
バルセロナではガウディを前にして涙が止まらなかった。
パリではラオス人の愚連隊とつるんでハシシの密売をしては、らりった頭で美術館めぐり。
ベルリンのブランデンブルグ門を前に、自由とはなにか、その代償とはなにか、についてとことん考えた。

そしてニューヨーク。
ここニューヨークに来て、もう旅はやめた、と思った。
ここ以上の街は、もうほかには見つからないだろう。
この街に暮らそう、と思った。旅は終わりだ。俺はこの街で暮らす。
そしてこの街を拠点にして、また新たな旅にでる。

こうして俺はニューヨーカーになった。

ニューヨーカーとして旅をし、そしてニューヨークに戻ってくる。
旅先でニューヨークを思うと、ニューヨーク恋しさに涙が出てくる。
それは日本においても同じだ。
生まれ故郷の街で、ニューヨークを思ってホームシックに身悶えていた時、
もう日本はこりごりだ。二度と帰るのはやめよう、と思ったものだ。

という訳で、
俺は俺自身の選択で勝手にこの街を俺の故郷と決め、
俺自身の選択で、自身の国籍を、ニューヨーカーと定めた。

そうして旅は終わった。

そんな旅の中で、学んだこと、が、あるとすれば、それは、それは、

人生は、生きるということは、わりと、面白い、ということ。

がしかし、そんな経験は、なにひとつ、なにひとつとして、日本の生活にはプラスには働かなかった。

日本にいる間、俺は、旅の間に学んだ、人生は割りと楽しい、というその真実を、
ひた隠しに隠し続け、まさに、おくびにも出さずに暮らしてきた筈だった。

そしてニューヨーク。
そうだ、ここはニューヨークなのだ。

そう思ったら気分が楽になった。

そうだ、俺はニューヨーカーであったのだ。
だったら、これからも徹底的にニューヨーカーとして通せば良い。
それが俺の選んだ選択だったのだから。

という訳で、

ふざけろ、ばかやろうと、書き込んだ、TRAVEL AND RESEARCH。

返答がすぐに届いた。

NO PROBLEM 問題ありません。

してやったり、と思わず笑ってしまった。

どうだ。

ニューヨークはつまりはそういうところなのだ、
と改めて思い知った。




プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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