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帰り着くと、ニューヨークはすでに秋だった

Posted by 高見鈴虫 on 10.2012 ニューヨーク徒然
長い出張から帰ると、
ニューヨークは既に秋だった。

薄手のハーフコートに、
枯葉色のマフラーを巻いた人々。
どこからか流れてくる心地良いジャズ。
華やいだアッパーウエストサイドを抜けて
セントラルパークに向かう。

夏の酷暑からすっかり立ち直った
青い芝生のカーペットに寝転び、
ちょっと肌寒い風の中で犬とボール遊び。

やっと帰って来た、と改めてため息をつく。
そのまま身体が風の中に溶けだしてしまいそうなぐらいの
圧倒的な安心感。
いやあ、帰って来たな。
この瞬間をどれほど待ちわびていたことか。

この街のことならなんでも知っている。
何が良くて何が悪いか。
何がクールで何がみっともなくて、
何がGOODで何がNGか。

犬の奴はそんな俺の感慨も素知らぬ顔。
そうだよな、お前はずっとここにいたんだものな。
お前のほうがずっとこの街に馴染んでいる。
羨ましい話だ。

改めて思う。
ニューヨークのその特異性は、
一人であることの心地よさだ。

この街の基本は孤独だ。

誰もがこの街に一人で辿り着き、
そして自分の意志でこの街に残ることを決めた。
一人で仕事を探し、一人で生活を育み、
そんな一人で暮らす人々が、
互いの孤独を癒すために支え会い慰め会い、
そして再び一人に戻っていく。

そんな孤独な人々がすれ違い、
やあ、元気かい?とほほ笑み合う。

やあ、すっかり涼しくなったね。
実は俺、今朝、東京から帰ってきたばかりなんだ。
おお、それはお疲れ様。で、どうだった?
まあね、いろいろさ。ただね、一つ言えることは、この街が世界で一番ってことだね。
ははは、それはそれは。
ニューヨークが一番だよ。良い所も悪い所もあるけどさ。でもこの街が一番だ。
ああ、普段は俺もうんざりしているが、外から帰るたびに確かにそう思うな。
じゃあ。
ああ、しっかり休めよ。ニューヨークがタフな街だってことを忘れるな。

見ず知らずの人々同士が、午後のセントラルパークですれ違って、
そんな会話を交わしてはさらりと別れる。

そしてまたひとり。

秋の風に揺れる街路樹を見上げながら、
ああ、空気が乾いているな、と改めて思う。
街角に流れるジャズとタクシーのクラクションと交差点を行き交う人々。

ニューヨーク、俺の街だ。

もうどこにも行きたくない、とつくづく思っている。

IMG_1856.jpg

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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