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りんごとバラセン

Posted by 高見鈴虫 on 27.2007 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
ブルックリンのスタジオに行く道すがら、
りんごを齧りながら歩くことにしている。

やっぱな、
ゲットーにはりんごだぜ、と思う。
男がゲットーを歩く時にはさ、
もうこれ、りんご齧りながら、しかないぜ、と。

俺のスタジオ、ブルックリンの川沿いの外れの外れ、
昼間でもほとんど誰も降りないごみだらけ駅から、
街道沿いのどぶの脇を曲がって
人気のない倉庫街を抜けて、
高速道路の立体交差の真下、
廃品回収のゴミと事故車の部品の山が連らなる
あの荒みきったゲットーの風景、
崩れかけたビルにはガラスの代わりにベニア板。
捩れたバラセンにぶら下った
FOR SALEの看板が風に揺れて、
階段の踊り場にたむろした胡乱な目つきの少年達が、
むっつりと押し黙ったまま、
迷い込んできた余所者を上から下まで舐めるように
睨みつけきやがってさ。
ああもうこれ、決まり過ぎって感じ、
まるで絵に描いたようなゲットー。

そんなゲットーな風景の中を、
擦り切れたジーンズに
肩にひっかけたかばんにスティクぶっ刺して、
りんごを齧りながら、鼻歌まじりに足取りも軽く、
思わず、
お前の夢を見たよ、いきがった顔してさ、
なんて、忘れかけたフレーズを掠れた口笛で繰り返して。

おいおい、そこの兄ちゃん、なに見てやがるんだよ、
用があるならこっちから聞いてやるぜ、
ただてめえ、
おかしな真似しやがったら、
その場で顔の真中に右ストレート、
前歯全部を叩き折ってやるからな、
なんてさ(笑

そう、身も心もロッカーな気分。
気分はほとんど、あしたのジョー。
赤いハンチングは被ってないけど、
へへへ、なんて鼻を啜ってみせて、
そして右手には歯型付きの赤りんご。
これ見よがしの大口で齧りながら
男一匹ブルックリンを行く
ああ、この俺様、格好良すぎる。
まさに無敵感覚。
まさにブルックリン気分。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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