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父親の語るべき夢

Posted by 高見鈴虫 on 23.2008 今日の格言
父親の語るべき夢、
或いは、こんな話を父親に語って欲しかったって夢、
俺の場合もしかして、
それって、航海士、の話だったかもしれない。
海があって、まだ見ぬ大陸があって、
風が吹いて、波が立って、
さあ、いざ行かん、夢の大陸へ、
みたいなさ。
つまり、冒険の物語。見果てぬ夢の物語。

俺の親父は苦労人だったから、
ことあるごとに、
人生は辛いぞ、みたいなことばかり言っていたが、
つまりそれ、
生きていてつまらない、
つまり、自分の人生がつまらない、ということを、
子供とシェアしたかっただけの話か、と。

俺と親父のすれ違いはつまりはそれだ。
子供には夢を語るべきだ。
例えそれが嘘だったとしても、だ。
そして、
人生は楽しい、と言ってやるべきだ。
早くオトナになれ、面白いぞ、と。

という訳で、
俺は勝手に冒険の旅に出た。
最初は駅のホームで寝る、ぐらいのところだったが、
街をうろつき、バイトを探し、
ビル街の風に煽られながら人に頼り、助けられ、
そうやって旅を続けながら、
愛すべき人に会って、憎むべき人に会って、
笑って怒って、得て失って、
金に困って、女に困って、仕事に困って、
とやっているうちに、
その旅っていうのがつまりは、
オトナになる、ということなんだな、
と気づいたのはつい最近。

で、俺はまだ旅を続けてる。
浮世草のように枯れ草のように、
でも、一人で生きてる。
世知辛い世の中、
騙し騙されしながらそれでもなんとか生き抜いている。
楽なだけ、ではないが、辛いことばかりじゃない。
幸せ一杯でもないが、たまにはそれを感じることもある。
まじめ一途にやってるつもりはさらさらないが、
そうそうと不真面目ばかりとも思っていない。
刑務所にも入っていないし、
給料は安いが仕事は続けているし、
離婚だってしていない。

そう、かみさんがいてくれれば俺はなんとかがんばれる、
といまでも思っているし。

そしてそんなかみさんと俺はいまでも航海士の夢を語りあっている。
海を越えて山を越えて、さあ、いざ行かん、夢の大陸へ、
つまり、冒険の物語。

この先、なにがあったとしても、
棺桶の蓋に釘が打たれる寸前には
ああああ、面白かった、
と叫んでやりたい。
意地でも叫んでやるぞ、と思っている。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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