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パナマでパパッと

Posted by 高見鈴虫 on 01.2006 旅の言葉   0 comments   0 trackback
昔、パナマを訪れた時、
街を流すタクシーが、そこかしこで、
パパッ、と短くクラクションを鳴らすことに気づいた。
まあねえ、
交差点ごとに浮浪者たちがたむろしていて、
信号で停まるたびにわっと群がっては取り巻いて、
腐ったばななから歯ブラシから髭剃りからサンダルの片割れからを、
窓の隙間から、買え買え、とつこんできたり、
なんて街だからさ、
おい、てめえ、どけどけ、みたいなかんじで、
クラクション鳴らす機会も多いのだろうな、とは思っていたのだけれど。
でも、いや、待てよ、
ともすると街中きっての目抜き通り、
エスパーニャ通り沿いのオフィス街の、
ここだけは取ってつけたような精錬された一角でも、
あれ、用も無いのに、
パパッ、パパッ、っとそこら中でクラクション。
ともすると、パッパッパッパーと鳴らし始めたが途端に、
重なるクラクションが大コーラス、なんてこともあって、
すわ、事故か、喧嘩か、発砲騒ぎか、
なんて慌てて振り返っては、ケパサ、どうしたの?
と繰り返しても、まわりの男ども、
きまって顔を見合わせむふふふ、と笑っているばかり。

という訳で、
実際にタクシーの助手席に乗って始めて気づいたこの街の秘密。
パナマでパパッと、の理由は、
つまりはムチャチャ、つまり、ボニータ、つまり、むふふふ。

強烈な日差しの中を、
丸々と張り切ったオシリをピチピチのタイトスカートに包んで、
これでもかとばかりに長い足とくびれたウエストを強調しながら、
汗の滲んだ白いブラウスのはだけた胸元にむにゅっと寄せあげた褐色のおつぱい。
思わず、おおお、と振り返ってしまう美女、美女、美女。
そう、この街、美人が多い。
白いのも黒いのも黄色いのも混ざったのも、
とりあえずこの目抜き通りを歩く美女達は、
もう舞台の上、キャットウォーク、
汗に湿った髪をかきあげながら細い顎をキッと上げて、
ピンヒールによろけながら反り返るまでに背筋を伸ばして、
右へ左へとこれ見よがしに腰を振りながら、
ああ、たまらないパナマ美人。ほんと、釘付けって感じ。

という訳でタクシーの運転手、
そんな美女を見かけるたびに、パパッと。
そう、乗らない?でもあり、
おおお、いいオンナ、でもあり、
彼女!かのじょ!でもあり、
かわいー、こっちむいてー!でもあり、
つまり、そういう合図。
パパッ、パパッ、パパッ!

という訳で、
タクシーに乗ると必ず助手席に乗ることにした俺は、
お、と思うたびに、おい、鳴らせ、鳴らせ、なんて。
思わず手を伸ばして、
おい、ハンドルいじるな、なんて怒る奴もいるけど、
だめ、これだけはドライバーの特権、
なんて変な威張り方する奴もいるけど、
大抵は、
お、どれどれ、おいおい、あれがか?よしよし、パパッなんて。

たまには意見の相違というか、
どれ? おお、エジャス・エレファンタ=んだよ、デブ、象女じゃねえか、
とか、
ノーノーノー、チカチカ、ニーニャ=だめだめ、まだガキだ、
とか。
でも、思わず二人そろって、パパッ、なんてやっちゃたりすると、
むふふふふ、なんて顔を見合わせて。

そんなとき、ふと見上げる交差点。
横断歩道の真ん中でさりげなく振り返った彼女から、
まるでフラッシュがまたたいたようなスティングの一撃。
おおおおおお、なんて、一瞬で頭がスパーク。
追いかけろ!降りて追いかけろ、なんて、
思わず浮き足立っちゃったりして。

そんな訳で、パナマの町を歩きながら、
どこかでまたパパってなクラクションを聞きつけると、
思わずむふふふふ、なんて、
ちょっと幸せな気分になったりしたものなのでした。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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