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「おまんこ」にまつわる話 そのいち ~ 「おまんこ」と「ヴァジャイナ」

Posted by 高見鈴虫 on 03.2012 旅の言葉
アメリカに着いてすぐの頃、友達になったばかりのアレックスから
なあ、日本語でいっちばん汚ねえ言葉はなんて言うんだよ、
というので、
それはもちろん「おまんこ」に決まってるじゃねえか、と教えてやった。

「おまんこ」か、おまんこ、おまんこ、おまんこ、O-MA-NN-KOO 

と神妙な顔をして口のなかで繰り返している。

どうも まん の ま が上手く行かず、どうしても んま、と言う感じに唇に溜めてしまう。

だから、そうじゃねえよ、もっと普通に、おーまーんーこー、と、いやそうじゃなくて、なんでこんな簡単なことができねえのかな、といい加減苛々。

で、俺も合わせて、おまんこ、おるんまんこっ おほまはぬこほ んおんまんんこん と繰り返しているうちに
なにがなんだかわからなくなってきて思わずケラケラを笑い出してしまう。

あのよお、どこの世界にたかが おまんこ ごときにこれだけの苦労をする奴がいるものか、

というがアレックスは真剣そのもの。

おんま おんま おま おんま んこ んこ んこ おまんこ おーまーんーこおお、
くそ FUCK できねえよ、ASSHOLE おまんこ FUCK

と自分の頬っぺたにパンチをくれては悔しがっていたのだが、

フリーウエイのエグジットを降りてようやくダウンタウンのループに差し掛かった頃になって、
いきなり、おっまんこ、と一声。

おっと、できたじゃねえか。もう一回やってみろよ。おっまんこ、だからそのおかしなオンミョウをやめろって、

おまんこ、オマンコ おまんこ オマンコ おお、できたできた、いい感じじゃねえの、

OK、合格! と言ったとたん、

いきなり開けた窓から身を乗り出して、

おーまーんーこぉぉぉ! とやってみたものだ。

これにはさすがに驚いたが、当然のことながらここアメリカでは、
いくら、おまんこ、と連呼したところで誰に気にされる訳でもない。
下手をすると、満面の笑みを浮かべて、はーい、おまんこー、とやり返される始末。

調子に乗ったアレックス、道行く人にいちいち、
へい! おまんこ~! HOW ARE YOU!?
と呼びかけては、
OMANKO! GOOD OMANKO HEY SAY IT! OMANKO MEN!
と大はしゃぎ。

あのなあ、選挙演説じゃねえんだから、と苦笑いをしていると、

こともあろうにいきなり、うっぷす、これはまさしく日本人だろ、という、
見るからにこれ以上なく萎びきった陰気臭いというより黴臭いダークスーツゆらゆら軍団に向けて、

おまんこー、どっもー、おまんこー、でーす、とやりやがった。

これにはさすがにぶっ飛びを通り越して全身硬直。
やべえ、顔見られなかったかな、ああでもこの車だ、見られたら一発でもろばれだ。くっそぉ頭いてえ。

で、お前、ちょっといい加減、そのおまんこおまんこやめんかい、と言ってみたのだが、
どこ吹く風のアレックス。やめろと言えば言うほどますますギアアップして、
おまんこ おまんこ と繰り返している。
挙句に、カーステFMの歌に合わせ、FUCKの代わりに、名詞の前には必ず おまんこ をつけ、早口言葉のように歌い始める。

あ、でも、それは違うな。
なにがだよ。わっだおまんこ!?
だから、このおまんこは、FUCK の代わりにはならねえよ。
FUCKには、くそ ってのがしっくり来るような。
んだよその、クッソッ、ってのは。わっだ・ふぁっきん・くっそ、
そうそう、そんな感じで、SHITに似ているが、割とFUCKと似たように使えるんだよ。

って感じで、わっだくっそふぁっくあすほーる、って訳だ、と説明しながら、
糞だ、まんこだ、けつの穴だ、とだんだん汚さもリアル感が充実して来る。

で、なんだよ、あのさっきの、おまんこ、ってのは、というから、
だから、おまんこ、だよ、と握りこぶしの中から親指を突き出す例のポーズ。
つまり、おんなのあそこのこと。

ああ、プッシーのことか、とアレックス。
いや、プッシーってのとはちょっと違うよな。ニュアンスが。
カントのことか、CUNT C-U-N-T。
いや、カントってのとも違うような気がするがな。

で、どういう使い方をするんだ?
だから使わねえって。決して口にしてはいけない危険な言葉なんだよ、おまんこってのは。

ほうほう、そういうことか、と頷きながら、

いきなり隣りを走る車に向かって おまんこ! んだ?この野郎! うるせえ、このFUCKINおまんこ!すっこんでろ、とだんだんおまんこの使い方も悦に入ってきた。

で、そうそう、おまんこ、なんと言ったらいいか、そうだな、といろいろ考えた挙句、

ちょっと堅苦しいが、ヴァジャイナ、でどうだろう。

え!?なんだって!?

ヴァジャイナ、と言ったとたんに、いきなり凍りついて耳まで赤くしたアレックス。
ばか、おまえ、大きな声で言うなよ、誰かに聞かれたらどうすんだよ、と。

いや、やめねえ、次は俺の番だ、と、

バジャイナ、バージャイナ、VA VE VA VE ヴァ、ヴァ、ッヴァ、ヴァジャイナ こんな感じか?

馬鹿やろう、知るか、と言った切りむっつりと黙り込んだアレックス。

という訳でさっきまで復讐というわけで、ヴァッヴァッヴぁヴぁっヴぁじゃじゃいないないな、とやってやったわけでだが、
だから、やめろって、やめろって、とうつむくばかり。聞かねえ、聞こえねえ、と耳を塞いでしまう。

だろ?でも俺はぜんぜんOKなんだよ。日本人だからな。ヴァジャイナがなにか知らねえし、知ったことじゃねえし。

という訳で、
そら、とばかりに窓を開けて、ヴァジャイナー!! と一発。

あああ、ばか、おまえ、やめろ、やめろ、とアレックスのウロタエかたがあまりにもおかしくて、

羽交い絞めにされながらも、
ヴァジャイナー、へーい、ゆー、ヴァジャイナー。サックマイディック、ヴァジャイナー、ジュシープッシー。

思わずぱにくったアレックス、運転中の俺にいきなり襲い掛かってきて羽交い絞め。
だからやめろって、と口を押さえられ首を絞められ、

うるせえ、へい、ゆー、ヴァジャイナー、ファックユー、プッシープッシー、馬鹿やろう放せ!

とやってるそばから車は歩道に乗り上げながら赤信号の交差点に突入してゴミ箱を跳ね飛ばし。

挙句に、馬鹿やろう、俺降りるぜ、とドアを叩きつけて、おまんこ!と一声。

んだ、このやろう、てめえのやったことと同じじゃねえか、ヴァジャイナ!

という訳で帰り道、唇の端で、ヴァジャイナ、と一言。
うーん、ぜんぜんなんにも感じねえな。

そのうち、これが、このヴァジャイナ、という言葉を口にしただけで
思わず顔を真っ赤にして凍りつくようになって初めてアメリカというものが判るような気がするんだよな、と。

ヴァジャイナ、おまんこ、まさに文化の秘部だな。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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