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IT何でも屋~名医のあんちゃん

Posted by 高見鈴虫 on 21.2012 技術系
嘗て小銭稼ぎにIT関連のコンサル、つまりは何でも屋稼業をやっていた頃、
ユーザさんからは、魔法使いのあんちゃん、的な称号を頂いていた。

あのあんちゃん、柄は悪いし、態度はでかいし、
口を開けばふざけてばっかりいる、
が、まあ、とりあえずはなおっている。
まるで極悪の魔法使いやな。

まあ理由はと言えば、
しろうとさんを相手にいちいち技術用語を並べても、
どうせチンプンカンプンか、あるいは、あまりの訳の判らなさに逆に腹を立てるか、
が関の山。

どうせなにかを教えてくれ、やら、ちゃんと説明してくれ、
なんていうのも、
実は理屈が知りたい訳ではなく、やり方、を手っ取り早く教えて欲しい、と言うだけ。

やり方だけ教えても、次に起こったことが別の理由によるものだった場合は、
まったく違うことをやられて深みに嵌るのが落ち。

という訳で、ユーザーには極力技術的なことは話さないようにしていた。

で、うるさく作業に首を突っ込んで邪魔をされないように、
例のマジシャンの要領で、
口では全く関係ない下らない冗談を話してユーザの気をそちらに逸らしながら、
手だけはちょんちょんちょん、と動かして、はい秒殺。

という訳で、はい、なほりました。
やら、あれ、いつのまにかなほってる、ではさようなら、とやっていた訳だ。

だから、そうやって誤魔化さないで、ちゃんと教えてくださいよ、
と絡まれることもあったが、その時には、
いや、俺はなにもしていない、勝手になほっていた、と言い張って、徹底的にお茶を濁した。

おちょくっているのか、と絡まれることもあったが、
事実おちょくっていたので言い返すこともできず。

まあまあ、とニヤニヤ笑いでやりすごしていたわけだが、
実はそれには理由がある。

今日、PCの問題、なんかで怒ったり騒いだり時には泣いたり、
なんてことを繰り返している人々が、なんとも長閑に見えてしょうがなかったのだ。

バカ、というのではもちろんないのだが、
なんか、長閑だな、と。

まるで犬に吠えられたことに本気で怒ったり騒いだり悲しんだり、
あるいは吠えた犬の気持ちを深読みしてみたり、
そんな人々を見るように、
ついつい傍観してしまっていた訳だ。

あまりにもお困りな方にはさりげなくその極意をお伝えしていたりもしたのだが、
例によってほとんどすべての人がその極意の言葉を冗談だと思ってやりすごしていたに違いない。

要は、会話なのである。
つまり、コンピュータとの会話。

オペミスをすると必ずエラーが上がる。
その内容を素直に読み取ってそこに書いてある指示に従う。
その当たり前の会話が、できていない訳である。

コンピューターとの会話と言っても、
まさかコンピューター自身がしゃべっているわけではない。

それはつまり、そのアプリを作った開発者が、
ユーザーがオペミスをしたら警告メッセージをあげろよ、
というプログラムをわざわざ書いている訳で、
おせっかいなプログラマーは、
その警告メッセージに番号を振ってわかりやすくしたり、
そうではなくて、こうしてください、的な伝言まで表示させるように、
それをわざわざ、時としてとても苦労して、事前に用意してくれている訳である。

開発者はときとして、
たぶん、ユーザはこんな間違いを犯すだろう、
という予想というかシュミレーションをやって、
できるだけ多くの間違いパターンを事前に予測して、
それに対するマニュアルを作ったり、
あるいは、なんらかの警告メッセージを上げる、
ってなプログラムをしこしこと書き続けている。
それは開発作業の一部ではあるのだが、
実際のプログラムの動作とは逆行する、
いわば後出し作業。

あーあ、やっぱユーザさん、こんな間違いを犯すだろうな、
というのをある程度、あるいは、徹底的に予想して、
それに防衛戦を貼るわけだが、
やはり、どれだけシュミレートしても、
予想だにしなかったとんでもないオペミスをする人もいる訳で、
うーん、人間というやつ、まったく予測がつかない、
なんて考えていると、
ついつい、深層心理の深読みなんて世界にも入っていったりもする訳だ。


しかしながら、
そんな苦労も知らずに、
幼気なユーザさんたち、
つまりは困ったちゃんたちは、
そんな開発者の
まさに愛情を込めって書き進めた伝言のすべてを、
読まずにスキップしてしまう。

せっかくの親心、
こうしたら、困るだろうな、そうなったらどうしてあげよう、
と綴れおった警告メッセージ、

どこどこが間違いです、どうしてください、とメッセージが上がっているのに、
ユーザというやつはまったく不思議なもので、
そういうメッセージを徹底的に絶対に読んでくれない。

マニュアル作っても読んでくれない、
警告メッセージも読んでくれない、
だったらいったいどうすればいいんだよ~!

涙をほろほろと流す開発者の姿が目に浮かぶようだ。

という訳で、まあそんな訳で、

開発者の苦労と、ユーザの身勝手を同時に見ながら、

泣く子犬の頭を撫でるように、はいはい、わかったわかった、と、
思わずニヤニヤしてしまったり、していたわけだ。

これがまあ、魔法使い、あるいは、名医のあんちゃん、と言われれた所以である。


プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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