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ブルックリン・ドラムサークル

Posted by 高見鈴虫 on 17.2007 音楽ねた   0 comments   0 trackback
休日の朝、いきなり6時起き。
と言うのも、
ここの所、出張続きでちっとも連絡が取れなかったテニス仲間、
元UCLAのトーナメント代表選手、
つまり、プロにほとんど両足突っ込んでいた人
からいきなり電話があって、
ようやく時間ができたらからちょっと打たないか、ってな話。
ただ、昼からまた仕事なんで、そうだな、7時でどうだろう、と。
おいおいおいおい。相変わらずこいついつ寝てるのかな、
と首をかしげながら、
うーん、しかし、と、休日の朝に6時起き、おいおいおい。
が、しかし、だ。
そう、こいつ上手い。死ぬほど。
フォームを観るだけで惚れ惚れするぐらい。
そう、俺もテニサーの端くれ。
強い奴とやりたい。思い切り打ちのめして欲しい。
やられればやられるほど嬉しくて嬉しくて、と。
そう、テニサー、強い奴が全て。
ビキニぴちぴちの半尻寄せ乳ねえちゃんのコーチさせられるよりも、
髭面のクマ男と汗みどろでバシバシ打ち合っていたほうがずっと快感、と。
と言うわけで、よく晴れた日曜の朝7時、
なんと全員集合。そう、みんなテニサー。
人種も言葉もそれぞれ違うけど、
強い奴が好き、これこそが唯一のルール。




と言うわけで日曜日。
朝の7時から4時間、ゲロが出そうなぐらいにテニス三昧。
下手すると全身緊縛のセリナ状態。
おいおい、
ほとんどの人々がまだベッドで口開けてる時間に、
身体中にベンゲル塗るたくって目もしばしば。
で、昼前には完全に燃え尽きて気絶状態。
しかしながら良い天気。
このまま帰ったらドア開けた途端に昏睡だろう、
と判っているがそれはあまりにも勿体無い大快晴。
それならちょっくらスタジオにでも寄ってみるか、
とえっちらおっちらちゃりんここいで川向こうのブルックリン。
そう言えばこないだ貰った凄いサンバのバンド、
FUNDO DE QUINTALって奴、
カーステで聴いて凄く良かったから、
ちょっと合わせて見ようかな、なんて始めた途端、
おっと、一瞬のうちに完全に持って行かれてしまって、
はっと気づくと4時間、完全にノンストップ。
やばい、と思った時にはもう遅くて、
いきなり左の内腿から始まった不気味な痙攣の余波、
右の脹脛から脇腹から手首からがと広がり初めて。
くそう、まだまだこれからって時に、
と、寄る年波に舌打ちしつつ、分厚い防音ドアを開けると、
あれ、明るい。
そう、まだ五時前。
そうか、今日は朝7時からテニスやってたっけ、
と、なんか凄く得した気分になって、
そんならちょっとブルックリン探索を気取って、
なんて、いやいや、ほんとは、
チャリンコでタラタラ走りながら女の子見てるだけなんだけど、
なんてしてたら、いつのまにかプロスペクト・パーク。
夕暮れの涼しい風を全身に受けながら、
ああ、この快感、ほんとちゃりんこやめられない、
といい気になってかっ飛んでいると、
ふと耳を澄ます木立の向こうから、
どこかで聞いたような、
と言うか、あまりにも慣れ親しみすぎた音が、
ドワンドワンと地鳴りのように響いてくる。
どこだどこだ、と首をきょろきょろやりながら、
ふとゆるいスロープを曲がった所で、
おっとそこにアフリカ。余りに唐突に。
木陰にい並ぶ屋台には、
ラスタグッズのアクセサリから訳の判らない木彫りの土人から、
がんじゃの匂い消しのお香からハイレ・スラッシュの額縁入りから
揚げプランタンからオクラのケチャップ煮から
と、その狭間をこれでもかとごった返す人々、
極彩色のアフロドレスの巨大なおばちゃんと
白いピジャマ姿のとっつぁん、
つまりアフリカの正装した人々と、
ラスタなあんちゃんとヒップホップのガキと
臍出したジャリとすげえ尻した姉ちゃんと、
いかにも出てきたばかりというチンピラ、
そんな人々の頭の上から腹の底から、、
ズドンズドンと大地を奮わせる壮絶なドラムの音、
思わず足を踏み入れた途端に蒸せかえるガンジャの煙と
もうもうと上がる砂埃の中に目を凝らすと
なんとなんと手に手に太鼓を抱えた人々、
総勢推定百人以上、が、
筋肉ではちきれそうな腕をパンパンに腫らせならがら、
手の平が千切れ飛ぶとばかりに太鼓を叩きまくり汗飛び散らせまくり。
その音量だけでも凄い凄い。
で、並んだドラムに囲まれた広場で、
おばちゃんからがきからが魔でも憑いたかのように踊りまくり跳ねまくり。
そう、ブルックリン・プロスペクトパーク名物のドラムサークル、という奴。
おおお、これか、これだったのか。
と、思わずちゃりんこ放り出して飛び込んでしまって。
おおおおお、ブードゥーやブードゥーや、と
思わず大はしゃぎしていたら、
おいおい、そこのテニスのにいちゃん、
と、なんか一つ間違えばただのアルカイダ、
FBIに見つかったら一撃で豚箱入りみたいな爺さん、
そんなに好きならこれ叩け、とジヤンベを一つ、
ぽーん、と渡されて、おおおおお、来たー!
ああ、神様、これはもう私に取っては、
魚に水、基地外に刃物、ジャンキーにクラック、
ああああ、と思わずくるくる回ってしまいそうに
パンと叩いた途端、ジーンと肘にまで届きそうな疼痛の波、
痛い!凄い痛い!そうジヤンベ、叩くと痛い、痛すぎる。
が、
力いっぱいに叩き込むといきなり鼓膜が破けそうな強烈なインパクト。
おっさん、このドラム、無茶苦茶いい音がするな、
と振り返ると、アルカイダのおっさん、本当に嬉しそう。
やれやれ、と顎をしゃくられて、思わず調子に乗りまくって、
スラタッタタタタタ、とシンコペからフラムからめて、
三連から六連で巻き上げて、そらそらそらとビートに入ると
囲んだドラマー達から一斉にWELCOMEの挨拶。
まずは白装束に白い靴、パンチパーマにチョングラかけた
つまりこれが日本であったら完全に田舎の駅前のパチンコ屋に屯してるような、
そうただのチンピラのおっさん、ってのが、
一際にじり寄って、さあこい、これで来い、がんと来い、
と強烈なシンコペのリズム、
よーし、そうこなくっちゃ、とユニゾンで合わせながら、
裏表ウラウラベッカンコ、とアクセント移動からフレーズ半拍ずらして、
チンピラのおっさん、思わず腰が浮いて立ち上がりそう。
くううう、効くなあ。
途端に追従者がわれもわれもとユニゾンで合わせ初めて。、
もう怒涛のようなリズムの嵐。
周りを囲んだ常連風のおじちゃんおばちゃん、
目を見開いて睨みつけてる、と思いきや、
人垣の中からカウベルかざしたコービーそっくりのあんちゃんから、
ブラジルのユニフォーム来たコンガのおっさんから、
両脇に子供抱えたお母さんから
笛からピアニカからサックスからトランペットから、
そらそらそらとのにじり寄ってきて、
さあさあどうだどうだ、とHEADーON
おいおいどうでもいいけどあんたらみんな目が飛んでるぞ、
と笑いながら、
もうなにをどう叩いても完全にリズムに絡め取られてしまう、
そうあのエアポケット。
それがもう、10人20人30人が、
もう完全にぐるんぐるん状態で、
かっ飛びまくってこれはもうリズムですらない、
リズムですらないはずなのになんだこの躍動は
凄い、このビート、凄すぎだ。
壮絶なビートの洪水。完全に錐揉み状態。
いきなり隣に座ってたおばちゃんが弾かれたように飛び上がって、
いきなり猛スピードでシコを踏みながら壮絶な痙攣
そうあのアフリカのブードゥーダンス、
始まった始まった、魔が降りて来た、と。
回る回る婆さんが回る。白目剥いて回る。
といきなりそこかしこに釣られて立ち上がる人々。
子供から大人から老人から、黒人も白人も東洋人も、
回る回る砂埃の中。
叫ぶ、というよりは、喉をまん丸に開きまくって、
まるでドラム缶が吼えるような雄叫びを上げるおっさん、
尻も乳房も千切れ飛んでけとばかりに踊り狂う姉ちゃん。
駆けずり回るガキ、吼える犬。
ドープして完全に訳の判ってないヒッピー、
その間で気の違ったように写真撮りまくる観光客。
ねえねえそれにしても、みんなやたらに幸せそうだね。
そう、みんな完全にリズムに脳みそ溶けちゃって。
身も心も完全に雲の上。
リズムの中に自分も他人もどろどろに溶けてぐるぐる回って、
あああ、気持ちいい、と心底思う。
この音楽の作り出す強烈なエアポケットこそは、
人間が作り出せる珠玉中の珠玉、
いや、人間という肉体の箍を越えられる絶好の機会、
一種最高峰の快楽に近いものだと思う。

それが証拠にほら、
土人のおっさんも、樽のように太ったおばちゃんも、
ほとんどただのホームレスのような爺さんから、
パトカーが通る度に木陰に身を隠すチンピラから、
或いは、
背中にテニスラケット背負ったちゃりんこのヘルメット被ったままのおかしな東洋人も、
ドラムサークルのリズムの中にあってはそれに参加する全ての人々が、
まるで後光が刺すように、
神々しいプライドに溢れた顔をして思いきり胸を張っているのでした。
そう、快楽を手にしてるって状態、
それの状態が、なによりも幸せなのよ、人間。

と言うわけで、
突然の夕立にやられて解散するまで、
なんと5時間近く、
ジアンベ叩きまくり。手の平腫れまくり足攣りまくり。

という訳で魔が落ちたような日曜の夜11時過ぎ。
魂抜け状態のままえっちらおっちらとこぎ続けるちゃりんこ。
寝静まったブルックリンを抜け、
摩天楼への掛け橋を渡り、
人気の失せたチャイナタウンを突きって
無人の公園を音もなく疾走し、
ようやく辿り着いたミッドタウン35丁目。
アパートのドアを開けた時には、
廃人というより灰人、
完全に燃え尽きて炭さえも残ってない状態だったのでした。

ああ、またまた完全に遊びきってしまった日曜日
ああ幸せすぎる。
明日からまた地獄だな。




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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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