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実はあいつ

Posted by 高見鈴虫 on 22.2008 嘗て知った結末
断っておくが、
一番大切なのはやはりかみさん、
断っておくが、
一番したいのはやはり君。
断っておくが、
でも一番好きなのは、実はあいつ、

でも実は、
一番気の会うのはやっぱり君。
でも実は、
一番判りあっているのはやっぱりかみさん
でも実は、
一番訳判らないのがもちろんあいつ、

そして実に、
一番綺麗なのはもちろん君。
一番完璧なのはもちろんかみさん。
で、一番どうしようもないのがやっぱりあいつ。

なんだけどさ、
そう、
それは判ってるんだけどさ、
どうしてかな、

それに加えて、
一番やさしいのがやっぱり君
一番頭がいいのがやっぱりかみさん
一番性格が悪くて頭が悪いのがどうしてもあいつ。

どうしてなのかな、どうしてなのかな、
でも、そんなあいつに夢中の俺。
まったくわけがわからない。

美人でもないし、やさしくもないし、
馬鹿で我儘で自分勝手でしかもブス。

ただね、
あの表情、普段はぶさいくな仏頂面が、
会ったとたんにまるで弾けるような笑顔、
あの声、下らないお喋りに一人で笑いこける
あの掠れた声のバイブレーション。
エレベータの扉が閉まったと同時に、
ふと溜息をつくように髪を掻き揚げたときの、
あのぞっとするような艶かしさ。


それはまるで、隠れた宝石。
それがいつ磨かれるとは判らないし、
どう磨かれるのか、あるいはこの先、
輝くことはあるのか、とも思うのだけれど、
でもね、どういうわけか、
俺はあいつに夢中。

俺しかしらないあの笑顔。
俺しかしらないあの笑い声。
俺しかしらないあの表情。

どうしてなのかな。どうしてなのかな。

ブスで我儘で性格の悪い、
歯並びが悪くて舌足らずで受け口で、
がりがりで貧乳でお尻もペタンコの
馬鹿で貧乏でヤンキーあがり。
臆病で短気でミーハーで、
性格も音楽の趣味も話題さえかみ合わない、
そんなあいつなのに、
どういうわけか完全に骨抜き。

別にやりたいだけってわけでもないんだよ。
やるだけなら勿論君のほうがずっと良いし、
別に癒されたいわけでもないんだよ。
一緒にいるだけならもちろんかみさんの方がずっと寛げるし、
でもね、なんかあいつに夢中。

ずっとあの声が耳を離れず、
ずっとあの視線が網膜から消えず、
ずっとあの匂いが鼻についたまま。

もう振り向かれただけで、
もう髪を揺らしただけで、
もう胸元がちょっと覗いただけで、
もう完全に頭がスパーク。
なんなんだ、この子、と思わず。
なんなんだなんなんだ、って。

という訳で、
そう、という訳なんだ。

だからもう少し待っててね。
もうすぐ熱も冷めるから、と言いながらもう1年だね。
まだまだ続きそうだけど。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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