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せたがやのしおらーめんにニューヨークの進化論の一例を垣間見る

Posted by 高見鈴虫 on 21.2007 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
金曜日の夜、
きゃぴきゃぴの新人さんたちが嵐のように去って行った後、
がらんとした社内にはいつしかベテラン系ばかり。
このどろんとした篭った空気もどこかしらなつかしい。
出張帰りの土産話を聞きながら、
去る人来る人の噂話をぼそりぼそり。
またまた新しい人が入ったってね、
こんどは誰のタイプの子なのかな。
また新しいプロジェクトが始まるね
ああ昔やった奴のニューバージョンって話なんだけど、さっぱり訳が判らなくてさ、
なんて
改めて入れ替わりの激しい業界。
変わらないのはこの音楽ばかり。
1GBのプレーヤーに入った厳選MP3。
それにしたって、
淘汰に淘汰を繰り返した末に
今残っているのは、やはりどれも外せない珠玉の名品ばかり。
つまり、どこもかしこも、
淘汰され厳選され、しがみ付くだけで精一杯。
では、俺に消されたファイル、
あの一昔前の名曲の数々はいったいどこへ。
永遠に消えてしまったって?
まさか。
きっとどこかで今こうしている時だって、
誰かのもっとも新しいお気に入りとして、密かに愛されている筈・・・
そう、つまり、水は流れないといけない、という訳でさ。
場所を変えなくては生きていけない、という訳でさ。

という訳でいい加減疲れ果てた10時過ぎ。
ふらりと迷いでた無人のダウンタウン。
そう、そうだよね、金曜の夜だもの、
こんな時間まで仕事してるのは世界でも俺一人、
なんて思ながら、ふと見上げる摩天楼の双璧。
そこかしこに灯る白い明かり。
あああ、とため息を一つ。
上には上がいる、ということか、
なんて、ちょっと救われた気分。
そう、
俺の抱える問題なんて世界にとっては全然大したことないって。
ふと吹き抜ける風、やたらと気持ちよくて。
夏のニューヨークの晴れた金曜日。
明日は朝から休日出社、とは思いながら。
このまま寝てしまうにはあまりにも勿体無い。

とかなんとか思ううちに
ふと魔がさして降りてしまったアスタープレース。
夜の風に吹かれながらセントマークスをそぞろ歩き。
昔はこの辺りで知らないものはないって言うぐらい
身体に馴染んだ一角・イーストビレッジ
変わらないな、とふと思う。
コンチネンタルもアナーキー・カフェも、
CBGBさえもなくなってしまったとは言うけれど、
でもこうして街を流しているだけで、
どことなくほっとしてしまうのはどうしてなのかな。
コーナーの土産物屋の人垣を避けて、
一時期の日系居酒屋ブームを引き摺ったやきとり屋をつっきって、
また新しいジャパレスと相変わらずの古着屋と
新企画と旧規格とフュージョンとリバイバルと、
みんな一緒くたに入り乱れて。
ヒッピーが失せて、パンクが失せて、ドラッグクイーンが失せて、クラブキッズが失せて、ディーラーが失せて、ヒップホップが失せて、タトゥーが失せて、
で、今はなに?
そうつまり、そうやって繰り返しながら、
やはりその時代時代で
似たような次元で似たような発想をしてる人々が、
その時代時代の格好に化けて集っているだけ。
つまり、やはり、基本的にコンセプトは変わらないのかな、なんて。
それってなんだろう、とふと考えて、
どこかの評論家みたいな陳腐な答えにならないうちに
すれ違う女のこたちの覗いた肌に惑わされ、
すぐに忘れてしまった。
サードを過ぎてセカンドを過ぎて、
段々邪魔系な人々も減るうちに、
ああ、ここはいつもの待ち合わせの場所だった
ああ、この店であいつと会ったけ、
ああ、ここであいつが殴られて、
ああ、この店で演っていたこともあったっけな、
なんて。
ああ、ここ潰れてなかったのかな、
あれ、この店は見たことないぞ。
ニューヨーク、変わり続ける街。
どこもかしこも細胞分裂。
古い角質が去り、新たな細胞がそこを埋めるように、
自然の定理にしたがって、
全てがあっというまに入れ替わって行く。
去るものは追わず来る者は拒まず。
ただ、居座ろうとした時点で真の戦いが始まる、のかな。
と言いながら名物店。
俺が初めてこの街にやって来たときにふと誘い込まれた店。
似たようにふと誘い込まれてそのままいついてしまった人びとで外のテーブルは一杯。
夢中になってなにかを話続ける人々、
多分また同じようなものを見つけ、
同じようなことを話して
同じよなものに驚き、同じようなものを愛し、憎み、
そして、そして、
さああ、どうなるのでしょう、と苦笑いしながら、
でもなんだか、顔つきをみているだけで、
だんだか予想ができちゃったりして、
なんてまたまたちょっと意地悪爺さんモード。
なんてしたり顔を浮かべながら、
しかしながら、だ、
アスターからジュールスまでの間で、
ただ一人として、ものの見事に、
知った顔に会わなかったってのは、
それはそれで特筆に価する、と思わないか?
なんて、思わず感心。
そう、細胞が入れ代わるように、
いつしか俺も入れ代わったって訳でさ。

そう言えば、
知人から聞きかじったラーメン屋、
どうも日本ではグルメラーメンブームという奴が
あったらしくて、
その煽りが遅ればせながらニューヨークにも届いて、
つまり、
日本で話題になった凄く美味しいラーメンが
ニューヨークでも食べられるってな話、らしい。
おお、グローバリゼイションの21世紀。
国境を越えて侵略するジャパニーズ中華ソバ。
まあいいや、
あいつがあれだけ言い張っていた
史上最強のラーメン屋・せたがや、って言うの?
それが名前?
そう言えばこのあたりかな、なんて、
ファースト・アヴェニューを左に折れてすぐ、
で、いきなり行列。
外人系とアジア系と日本人、3分の一づつ、ぐらい。
取り合えず、
なんかぽかーんとしたまま並んでいるうちにカウンター。
えっと、とんこつ、とか、チャーハン、とか、
あれ、なんだ、メニューに塩ラーメン、
しかないのかな、
そういえば、店員のTシャツも、塩、と書いてあるしね。
ああそう言う意味なんだ、
つまり、塩ラーメンの専門店、ってこと?
あれあれ、
ここでも厳選モード。
なんか客に食い物を選ばせない、
なんて、ちょっと思い上がりすぎなんじゃない?
じゃあいいや、帰る、なんてなるところを、
まあまあまあ、そこは金曜の夜、
なせばなる、れっといっとびー、
じゃあ、塩ラーメン、なんて日本語で注文、
なんて、
おいおい、ここは一体どこなんだよ、
なんて、いまだになんか騙されてる感じで、
唖然としているうちに、
目の前に置かれたせたが屋の塩ラーメン、
どんぶりが小さい、まるでお鉢じゃないか、
と文句ぶりぶりで一口、
おお、むむむむむ、
なんて唸っているうち、ほらなくなっちゃった、
けど、あれ、替え玉?あるの?
じゃあそれください、と付けてもらって、
むむむむむ、と再び唸り唸り。
あのねえ、これ、凄く美味しい。
美味しすぎ。
そう、なんか、レベルが違う、というか、
今までありがたがっていたラーメン、
古くはどさんこ、
じきにさっぽろ、
そしてめんちゃんこ、
次にめんくい、
という進化の過程、
ここに来てちゃんちゃらおかしい、というか、
ああ、いままで騙されていたのか、
というような気分。
つまり、これまでラーメンが
ぜんぜん目じゃなくなっちゃっていて、
完全に駆逐されてしまった状態。

つまり、これも進化の過程、細胞分裂の一例?
弱肉強食、適者生存、ってやつなのかな?
うーん、でも、やっぱり、
この美味しいって事実だけは歴然としている、わけで。
それが証拠にみるみるとスープを飲み干して、
ああ、大満足。と満面の笑顔。
こう考えると、進化もまんざら捨てたものじゃないな、なんて。

で、せたが屋を出て右に出て3軒目、
ここにも新たな行列。
なになに日本のクレープ屋さん。
おいしいの?
うん、すごくおいしいらしい、
と行列の人々、人種を問わず満面の笑顔。
いかにももう待ちきれないって感じ。
店員さんに聞いたお勧め、
に素直に従って、チョコバナナとダブルマンゴー
でも改めて、
なんでわざわざ日本人が、
ニューヨークでフランスのパンケーキを売らねばならぬのか、
なんて首をかしげながら、
届いたクレープ、
むむむむむ、美味い!美味すぎ!
ああ、ここにもか、進化の一例。
だがしかし、
ここまで歴然としておいしいと、
本家も本元も老舗も糞もない。
と見ると、ほらほらいきなりフランス人の一団。
ここ、おいしいんだぜ、ほんと、凄くおしいし、
と大騒ぎ。
そう、つまり、
これも進化の一形態。弱肉強食。適者生存。

という訳で、
一種壮絶な進化の過程の姿を目の当たりにしながら、
うーん、なんとなく、大満足。
幸せすぎる金曜日の夜更け。

やっぱりあたらしいものって、すばらしい。
なんて、
思わず感激したニューヨークの夜。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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