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犬を信用するな

Posted by 高見鈴虫 on 11.2012 犬の事情
愛犬家歴30年にもなる、うちのアパートのメンテナンスのおっさんから、
顔を合わすたびに、犬を信用するな、と言われる。

今3歳になるうちの犬は、
これまで部屋の中はもちろん廊下もエレベーターも休日の洗濯時にも、
近所の買い物ぐらいならば、
通常はリーシュなどつけずにそのままどこまででも、
澄ました顔して隣を歩いているし、
他の犬にあったときにも、遊んでおいての合図が無い限りは、
じゃれあいどころか挨拶も素通りしたりする。

そんな訳で近所でも、おりこうさん、で通っているのだが、
そんな俺に、
メンテナンスのおっさんは、
気をつけろ、犬は野獣だぞ、何をするかわからないぞ、
と繰り返す。

当初は、なにをいまさら、そこらの馬鹿犬と一緒にするなよ、
などと笑っていたのだが、
果たしてここにきて、そのおっさんの言葉がじわじわと
まるでボディブローのように効き始めている感がある。

確かに、なにをするか判らない、ところが、まったくない訳ではない。

いや、うちの犬に限ってまさか、と思えば思うほど、
そういえば、と思わないことがないでもない。

この間はすれちがいざまに酔っ払いに吠え立てた。
ドッグランのボールの取り合いでサイベリアンハスキーに飛び掛っていったり、
追いかけっこの最中に後ろ足に噛み付こうとしたシェパードに襲いかかり、
あわや片耳を食いちぎりそうになっていた。

まあ確かに、俺も含めてうちの犬は酔っ払いが嫌いだ。
どういう訳だかサイベリアンハスキーとジャーマン・シェパードとは相性が悪い。
ともするとロットワイラーやピットブルなんてのとも平気で悶着を起こす。
が、それは相性の問題で、というのは、もちろん言い訳であることに気がついている。

という訳で、メンテナンスのおっさんの話である。

まあな、確かに、と思わないでもない。

今日は今日で、夜の散歩の最中に、
馬鹿な酔っ払いがなにを思ったか、
すれ違いざまちょっかい、こともあろうにつま先でうちの犬の尻を蹴ろうとした。
とたん、するりとかわされたその足のズボンの裾を、逆に咥えられて引きずり回され初めて。
馬鹿やろう、なにしやがると、いきり立つよっぱらを、
背中から突き飛ばして、馬鹿はてめえだ、ぶっ殺すぞ、
とやったのは俺な訳だが、
あのまま行けば下手をすると飼い主ともども警察のお世話になっていたところだ。

そう、なにをするか判らない。

酔っ払いはとりあえず、そう、犬と、そして俺、つまり飼い主。

これはたぶん、犬に限ったことじゃねえな、ということは、
そういう俺が一番良く知っている筈なのだ。

正直に言ってしまえば、
今日にしたって、酔っ払いの背中から突き飛ばした時には、
実はなんの考えもなく、馬鹿なよっぱらいがそのまま頭から転んでくれずに、
振り返って歯向かって来たりしたら、
間髪をおかずに左から右の連打の構えができていたのには、
正直、俺自身が一番驚いていた。

そんな俺を逆に犬が心配して覗き込んでいて、
それで我に返った、というしだい。

これこそ、つまり、魔が刺す、という奴だ。

人間でさえこれなんだから、犬だって、魔が刺す、というよりは、
反射的に、はっと気がついた時には左右のワンツーを繰り出してしまっていた、
ぐらいのことなら十分にありえる訳なのだ。

犬に限らず、男だったらこの魔が刺した瞬間の記憶ぐらいだれにだってある筈だ。

つまり、いらっと来た瞬間に、すでに手なり足なりが出ちゃっていました、というあの例の奴。

ご存知ののように、それはまるで一瞬のできごと。
出来心、というにはできすぎで、
それこそまさに、、魔が刺す、という状態。
それこそつまりは、野獣の野獣たるゆえん。

どうですか、おとこども、そう聞けば、思わず犬の気持ちとシンクロしてくるでしょう。

という訳で、そう、メンテナンスのおっさんの話。

男=犬、は野獣、なにをするか判らないぞ、
はまさに、肝に銘じる必要がある、ということなのである。

くわばらくわばら

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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